スキージャンプの小林陵侑が取り戻した強さ。スーツのルール変更に翻弄されても五輪王者の力を発揮 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by MATSUO.K/AFLO SPORT

 そんな2本目のジャンプで自信をつけた小林は、3日目にはその自信をそのまま体現する完璧な強さを見せた。試合開始がこの2日間の午後4時から午前10時に変わったこの日は、終始強い向かい風が吹く条件。

 小林は予選で、上体を起こさずにそのまま前に素直に進んでいく柔らかな踏み切りをすると、作山コーチが「元々空中はうまいですが、マテリアルの不安もなくなったことで、空中のうまさが際立ってきた」と言うように140mを飛び、飛型点も19.5点(20点満点)を並べて1位に。

 1本目も予選と同じような踏み切りで141mを飛んだが、陵侑より少し弱い追い風のなかで140mを飛んだグラネルには6.2点差をつけられる2位。2本目は1本目より少し弱い向かい風のなかで143mを飛び、着地のテレマークもきれいに入ると、飛型点も審判5人中3人が満点の20点をつける完璧なジャンプを披露した。グラネルに12点差をつけて逆転優勝。強い陵侑の復活を印象づけた。

 2本目のジャンプを飛んだあとは、大きくガッツポーズも出た小林。「けっこううれしくてはしゃいじゃいましたね。今シーズンの前半は苦しんでいろいろ考えていたので、これからは楽しむ時間になったかな」と明るく笑う。

 試合後はジャッジのひとりから「俺が20点をつけたのは初めてだから、一緒に写真を撮ってくれと言われた」と言うが、次の1月28日からの第17、18戦は彼も大好きなフライングヒル。シーズン後半へ向け、札幌でつけた勢いをさらに加速させていきそうな雰囲気になってきた。

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