スキージャンプの小林陵侑が取り戻した強さ。スーツのルール変更に翻弄されても五輪王者の力を発揮

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by MATSUO.K/AFLO SPORT

 女子に続き、男子も3年ぶりの日本開催となったスキージャンプW杯男子札幌大会。大会前のW杯ランキングでは21位だった小林陵侑(土屋ホーム)は、この札幌3連戦で2勝と、3位1回の好成績を挙げ、W杯ランキングを7位に急上昇させた。

札幌で調子を取り戻した小林陵侑札幌で調子を取り戻した小林陵侑 昨季は北京五輪でノーマルヒル優勝、ラージヒル2位の成績を残し、W杯総合優勝も3シーズンぶり2回目の獲得を果たしていた小林。今季オフシーズンは、本業以外の忙しさもあってトレーニングを十分には積めず、股関節にも違和感があり「準備不足」と本人も言う状態でシーズンイン。

 さらにジャンプスーツのルール変更で、これまでスーツ寸法はボディ寸法に対し、1~3cm差だったのが2~4cm差に変更されたなか、11月5日のW杯開幕戦で小林は7位になったが、翌日の第2戦は30位。11月26日の第3戦から1月6日の第12戦ビショフスホーフェン大会までの長い遠征では、15位が最高で、そのうち3戦は2本目のジャンプに進めず0点という、これまでは考えられない結果になっていた。

 札幌大会も初日の予選は128.5mを飛んで9位だったが、本番の1本目は予選と同じ弱い向かい風のなか、予選よりスムーズな飛び出しをして135mを飛び、W杯ランキング1位のダビド・クバツキ(ポーランド)に3.9点差の2位という滑り出しになった。

 それでも5位まではW杯上位の選手もいる大混戦。これまでを考えれば、表彰台は厳しいと思えた。

 だが2本目は、そのトップ5が飛ぶ頃になると、それまでの向かい風が追い風に変わり、120m台前半のジャンプが出るようになってきた。小林の順番になると追い風がより強くなり、しばらく待たされた。

「そんなに結果は考えていなかった」と言い、心は平静だった。風が少し収まった秒速0.31mの追い風の条件で130mを飛んで合計得点を271.5点に。そのあとのクバツキが125.5mに終わり、今季初優勝が決まった。

「今季は苦しんでいたので、初表彰台がいきなり優勝というのはうれしいですね。この大会にはそこまで懸けていなかったのでプレッシャーもなかったですし、そもそも勝つことは考えていなかったのでビックリしています。スタートのシグナルと風も味方してくれたのだと思います」

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