田中陽希が「自分を変えたい」と挑んだ501座の過酷な登山。旅を経て気づいた「変えるのはちょっと違う」 (3ページ目)

  • 田中清行●取材・文 text by Tanaka Kiyoyuki
  • 岡庭璃子●撮影 photo by Okaniwa Rico

この記事に関連する写真を見る しかし、その状況を打破するには、前に進むしかない。時には立ち止まってもいい。それは後退ではなく、次に一歩を踏み出すための準備なのです。雨とか雪とかコロナで旅が停滞することもあり、いろんなものを抱え込んで暗い迷路に迷い込み、不安にさいなまれたこともありましたが、時間と、周りの人の笑顔や励ましに助けられながら、抜け出すことができました。

 足踏みしていても、次の一歩への準備期間だと思っていれば、いつか必ず前に進めるものなのです。特に山形県の酒田では緊急事態宣言が発出され、しかも停滞は3カ月に延び、それに伴ってゴールは4年目に入ることになってしまいます。「3百名山」は3年7カ月かかり、確かに長かったのですが、自分が納得した上での一歩一歩だったので、後悔はありません。後悔をしないために、一歩を確実に、一座を大切にしてきた、と言ったほうが正確かもしれません。

 きたる5月のアドベンチャーレースに出場します。もちろん優勝を目指します。11月には南米のパタゴニアエクスペディションレースがあって、それが本命です。ソロの旅で学んできたことと、高めてきたチーム力で、そして何より揺るがない精神で、大会に挑もうと思います。

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【profile】
田中陽希 たなか・ようき 
1983年、埼玉県生まれ、北海道育ち。明治大学在学中はスキー部に所属しクロスカントリースキーの選手として活躍。群馬県みなかみ町の「カッパクラブ」でリバーガイドとして働く傍ら、アドベンチャーレースのプロチーム「チームイーストウインド」で活動。2012、2013年のパタゴニア・エクスペディションレースに出場し、2年連続2位。2014年、人力のみで進む「日本百名山ひと筆書き」を達成。翌年に「2百名山」を、2018〜2021年には「3百名山」を踏破。

「日本三名山ひと筆書き Great Traverse」写真:一般社団法人人力チャレンジ応援部(田中陽希本人撮影)

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