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自転車転向2年余りの太田海也がデビューから6戦全勝の快挙。ナショナルチーム入りに「大きく羽ばたける舞台に立てた」 (2ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 同じく早期卒業した中野慎詞が太田に先んじる形でデビューし、その走りを参考にできたことも好結果につながったという。養成所で毎日ともに練習をしてきた仲間であり、実力を知る選手。その姿に自分を重ね、シミュレーションをしてきた。

「慎詞の脚力であのタイミングから仕掛けるのならば、自分ならこんな感じかな、という形でレースを組み立てる目安にしました。今後は慎詞だけでなく、他の選手や競輪界全体をそういう目で見て、自分に生かしていかないといけません」

 6走6勝。文句のつけようのない結果だが、本人は「まだまだ課題が多い。上にいけば、1%のミスでも負けてしまうので、その改善をしていかないと」と表情を引き締める。

 養成所時代から脚力で圧倒し、タイムトライアルでは好結果を残すも、競走となると勝てないことが多くあった。勝負は経験がものをいう領域。駆け引き、仕掛けどころを探る力を今後は磨いていきたい。

「待つことができないタイプなんです。レースでは我慢すべきタイミングがあるんですが、自分はそこで攻めてしまう。強みとも言えるんですが、逆に相手に利用されてしまう場面もある。この6走の間でもそのことを痛感する場面がありました」

 粗削りなレース運びでも勝ちきってしまうところに末恐ろしさを感じるが、太田自身は成長のため、そして勝ち続けるためにも今は内容にこだわる姿勢を崩さない。100%の力を出せて圧勝できればいいが、ミスしたり、力を発揮しきれないレースがあれば、そこを徹底的に振り返る。「90%の勝ち方ではダメ」と本人はきっぱり言う。

 ここまでの言葉にある通り、勝利を重ねても、ひたすら研鑽の毎日を送っている太田。「自信を得た感触はない」というが、勝ち続けていることで気持ちに変化が出てきた。

「プロとして走る前までは特に意識していなかったのですが、18連勝してS級へ特別昇級というのが自分の実力ならばできるんじゃないかと思えてきました。今はひとつ走るごとにそこへの思いが強くなっていますので、まずはそこが目標です」

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