自転車転向2年余りの太田海也がデビューから6戦全勝の快挙。ナショナルチーム入りに「大きく羽ばたける舞台に立てた」 (3ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 競輪は、実力上位からS級とA級の2つにランクが分かれている。さらにそれぞれが3つの班に区分される。デビューはA級3班からスタート。通常は年に2回、級班(ランク)の入れ替えが行なわれるが、3回(3開催)連続で完全優勝すれば特別昇班でA級2班に、さらにもう3回連続で完全優勝すればS級2班に特別昇級できる。太田の言う「18連勝でS級」とはこれを指す。
 
 1月からは、自転車競技のナショナルチームのメンバーにも選出された。世界で活躍することは、ボート競技をやっていた時から目指していた夢でもある。今はそのメンバーたちと日常的に練習を共にしている。

「ナショナルチームの先輩選手と一緒に走ると自分の実力不足を感じます。一方でそのトップ選手との差は埋められないものではないという手応えもあります。同じ練習環境をいただいているので、今は1日も早くその差を埋めていくことだけを考えています。日の丸を背負う意識を持つのは、ナショナルチーム内で先輩たちに勝ってからです」

競輪と自転車競技の両軸で高みを目指す太田競輪と自転車競技の両軸で高みを目指す太田 競輪でのS級昇級、自転車競技では国際大会での活躍とそれぞれに目標があるが、夢は他にもある。それは、幼いころから自転車に乗ることが大好きだったという、太田らしい素朴な欲求だ。

「どんな自転車でも乗りこなせる選手という評価を受けたいんです。競輪で使うのはピストバイクといって鉄製の自転車、でも自転車競技ではカーボンバイクという別のもので、乗り方も違います。

 ただ自分はアマチュア経験が短いので、他の選手よりカーボンの感覚が少ないのは逆にメリット。目標はピストバイクでも、カーボンバイクでも、さらに(舗装路での長距離走行に適した)ロードバイクでも自在に使いこなせる力をつけること。自転車に乗らせたら、なんでも速いと言われたいですね」

 2021年1月までサイクルショップで働いていた太田が、わずか1年でナショナルチームに選出されるまでになった。自分自身も、取り巻く環境も大きく変わったが、ようやく自分のいるべき世界にたどり着いたという思いがある。

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