内村航平が4度目の五輪出場のためにクリアすべき条件とは (3ページ目)
その内村と種目別の五輪代表の座を争うのは、Dスコア6.0点の「ヨネクラ」を持つ跳馬の米倉英信(徳洲会体操クラブ)だ。そして、ここまで米倉も内村と同じく110ポイントを獲得して並んでいる。
NHK杯の前日会見で内村は、種目を鉄棒に絞ったことで起きている変化についてこう話した。
「鉄棒だけになると、ミスなくやって成功していても全部完ぺきを目指してやらないと気が済まないというか......。1種目に絞ったからこそ、1動作も気を緩めてはいけないというのがあります。だから10個の技と言わず一つひとつの技を、自分の理想どおりに動かしたいという思いもあります」
演技後、内村は自信も見せた。
「今回も世界ランキング1位の得点は超えたと思いますが、そこを目指しているわけではなく、もっと先を目指してやっています。今やりたいのは本当に完ぺきな演技。他人が見て完ぺきな演技だと言われても、自分が満足しなければ納得できない。でもそれができたとしても、さらに上が見えてくるから、満足することはなく、さらにその上という演技を目指していくことが、五輪の金につながると思います」
目の前の結果に振り回されることなく先を見据えられるのは、長年経験を積み上げてきたからこその強みでもある。
彼が目指しているのは、体操の美学と考えていたオールラウンダーとしての強さではなく、自身が納得し、理想と考える完ぺきな演技をすること。内村が追い求める鉄棒の美学なのかもしれない。
今大会、個人枠1枠を巡る戦いは、内村と米倉が、3番手以下の他種目の選手を大きく引き離しているため、一騎打ちとなる。大会終了時の種目別の世界ランキングを元に上記の選考方法でポイント換算するため、互いにミスは許されない。より高いポイントを取ったほうが勝つ。
どちらが五輪の舞台に上がることになるのか、6月5日と6日の2回の演技で決まる。
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