2020年の相撲界を錣山親方が分析。「世代交代の波が押し寄せる」 (3ページ目)
ただ、稽古場の貴景勝を見ていて、気になったことがひとつあります。昨年、ケガに苦しめられながら、準備運動が少なすぎる、という点です。
今年35歳になる白鵬は、年齢とともにケガが多くなってきてはいますが、いつも準備運動を熱心に、そして入念に行なっています。39歳まで現役を務めた私も、現役の晩年の頃は、とくに準備体操、基礎運動を大切にしていました。
そう思うと、貴景勝のケガの多さは、準備運動不足からきているところもあるのではないか、と勘繰ってしまいます。「次(横綱)」を求める声もある貴景勝ですが、そのためには、準備運動不足を解消したほうがいいと思います。あと、たまに引くクセがあるので、上を目指すには、それを直してから、になるでしょうね。
一方、「次期・大関候補」として注目される朝乃山。「剛」の貴景勝に対して、彼は「柔」。非常に柔らかい相撲を取る、優れた力士です。体のバランスもいいですし、将来性という意味では、間違いない存在です。
それでも、私から見れば、相撲内容、積極性など、まだまだの部分が多いですね。昨年の夏場所で優勝した時は、対戦相手に自らの相撲を覚えられていなかった、という利点がありました。しかし今ではもう、皆が朝乃山を研究。取組の際には、朝乃山対策を立てており、朝乃山は得意の右四つの形に持ち込むことが難しくなってきています。
彼も上を目指すなら、そうした課題克服が必須。そこを打破していくのは、本人の努力次第です。
最後に、初場所についてですが、序盤から波乱の展開を見せています。「世代交代」と言っても、まだまだ横綱勢が中心と思っていましたが、こうなってくると、誰が優勝するのか、まったく予想がつきません。ファンのみなさんには、激戦の初場所を大いに堪能していただければと思います。
photo by Kai Keijiro錣山(しころやま)親方
元関脇・寺尾。1963年2月2日生まれ。鹿児島県出身。現役時代は得意の突っ張りなどで活躍。相撲界屈指の甘いマスクと引き締まった筋肉質の体つきで、女性ファンからの人気も高かった。2002年9月場所限りで引退。引退後は年寄・錣山を襲名し、井筒部屋の部屋付き親方を経て、2004年1月に錣山部屋を創設した。現在は後進の育成に日々力を注いでいる。
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