ボルダリングだけでは東京五輪で勝てない。「リード」ってなんぞや? (3ページ目)
この動きひとつにしても、是永や森のようにリードをメインにする選手と、そうではない選手のスムーズさは違い、消耗度も異なる。準決勝や決勝に残った選手たちはスムーズなクリップをしたものの、それでも数ヵ所でクリップするときにホールドを保持した手に余計な力が入ったことが、結果的に持久力の早めの消耗を招くことになった。
また、リードは1回のフォールで競技終了という緊張感がある。足を滑らせやすい小さなフットホールドを踏むときなどは、「動きが固くなって必要以上に力が入り、それで早めに腕が消耗した」と悔やんだ選手もいたが、リード慣れしている是永や森にとっては普通のことで、この差も結果にもつながったと言える。
日本のスポーツクライミングは、昨年のボルダリングW杯年間ランキング10位以内に男子5人、女子3人が名を連ねる「ボルダリング王国」として世界が認める実力を誇る。
しかし、リードに目を向ければ、過去にW杯年間王者を出したことはあるものの、最近は低迷が続く。昨年のリードW杯年間ランキング10位以内は男女合わせて是永敬一郎のみ。昨年のW杯の表彰台には、是永のほかに波田悠貴と楢﨑智亜が立ったが、女子は野口啓代が決勝に2度進んだだけでゼロに終わった。
東京五輪で実施される複合種目は、3種目がどんな配点になるかは未定だが、リードの配点が高くなることが有力視されている。東京五輪のメダル獲得を見据える協会は、ボルダリングで培った高いクライミング能力をリードで生かせるようにと、強化合宿などを行なっている。
ただ、それだけではボルダリングの片手間感は否めず、リードの経験値を高めることは難しい。ボルダリングがそうであったように、選手たちを飛躍的に成長させるためには、注目度を高めることに優るものはない。2月のボルダリング・ジャパンカップとほぼ同じ顔ぶれが出場しながら、リード日本選手権の観客数は約4分の1という寂しい現状の打破こそが、2年半後の大きな成功へのカギになっている。
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