14歳、14歳、15歳。女子中学生クライマー3人の東京五輪への道 (5ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そのなかで気になったのが、伊藤が「減量しないといけないんで」と答えた際の代表質問だ。主旨は「スポーツクライミングは体重が成績を左右する傾向が強いため、来年2月の大会に向けてトレーニングをしていると、お正月なのにお餅は食べられませんね」というもので、質問者は何の気なしに問いかけただけだろう。

 ただ周知のとおり、ダイエットは女性アスリートの健康問題を左右しかねないものだ。

 陸上やフィギュアスケートなどさまざまな競技で、女子選手が成績向上のために始めたダイエットによるエネルギー不足が原因で、無月経、利用可能エネルギー不足、骨粗鬆(こつそしょう)症の「女性アスリートの三主徴」に陥るケースは多く報告されている。スポーツクライミングでも成績を残すためのダイエットが原因で、18歳のころに月経が数ヵ月止まったと話す元W杯選手もいるのだ。

 中学生が活躍すれば話題性には事欠かないが、彼女たちはこれから17~18歳くらいにかけて、女性ホルモンの働きで女性らしい身体へと変化する時期を迎える。体重や体脂肪率は増えやすくなり、体形が変わることで成績が落ち込む可能性もある。

 まばゆいライトを一度でも浴びたアスリートは、ふたたびそこに戻りたいと"負けず嫌い"に火をつけて、無理なダイエットから健康を害する危険性をはらんでいる。女性アスリート、とりわけ10代女子選手にとってダイエットがデリケートな問題ということを忘れずに、「目標は東京オリンピック」と言葉にする伊藤、森、谷井のこれからを長い目で見守っていきたい。

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