驚きのW杯総合1位。小林潤志郎が「葛西頼み」の男子ジャンプを変えた (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 昨季は目覚ましい結果を出せずに、世界に置いていかれる形となった日本。今シーズン開幕からそんな日本チームを活性化させたのは、潤志郎の活躍だ。夏のサマーGP白馬大会で連勝して自信をつけ、冬用の氷を張った助走路で行なわれた日本選手権でもノーマルヒル優勝、ラージヒル2位と好調を維持していた。

 その潤志郎はW杯開幕戦のヴィスワ大会で、個人戦第1戦の1本目に124mを飛んで2位につけると、2本目は126.5mで1本目トップのリカルド・フライターク(ドイツ)を逆転した。世界の強豪を抑えて、まさかのW杯初優勝を飾ったのだ。

 高校時代はノルディック複合の選手で、2010年世界ジュニアでは個人スプリントで優勝し、東海大進学後にジャンプに転向している。なかなかW杯フル参戦を果たせず、弟の陵侑がフル参戦を果たした昨季、自身は8戦のみの出場と悔しい思いをしていた。そんな状況からいきなり頂点まで駆け上がった。

 これまでのように葛西のみが断トツに強い状態だと、チーム内では「葛西さんは特別だから」という雰囲気になりがちだった。それが、W杯組ではなかった潤志郎がいきなり好成績を出したことで、他の選手にも「コノヤロー。そんなに簡単にはいかせないぞ!」という気持ちが生まれてきている。

 もちろん、潤志郎自身も「夏の間から助走を大きく変えようと思って取り組んだことがよかった。少しずつ自分が思うことをできるようになってきたタイミングで、サマーグランプリを優勝できたのは自信になったし、そのあとのロシアのチャイコフスキーの試合でも、風が悪い中で20分待たされて飛ぶような状況だったのに2位になれたことで、気持ち的にも強くなったかなと思います」と自信を持ち始めている。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る