IOCバッハ会長との対話。もう喜んで五輪を開催する国はない (2ページ目)
いまバッハは62歳。小柄で、小太りで、親しみのわく人物だが、世界を治める立場にある。彼は今、ローザンヌ(スイス)にあるオリンピック・ミュージアムのテラスに座っている。雲ひとつない夏の日。バッハの後ろには、ジュネーブ湖とアルプスがまるで絵画のように見える。
バッハは、人類の最も古い創造物の守り手だ。リオデジャネイロで始まるオリンピックは、私たちと紀元前776年の古代ギリシャの人々を結びつける。
しかし、いまオリンピックは、バッハがフェンシング選手だったとき以降、最も衰退傾向にある。この危機は、ホスト国のブラジルを見舞っている多くの問題より深刻なものだ。
さらに言えば、オリンピズムの崇高な理想は今の薄汚い現実にそぐわなくなっている。大会開催をめぐっていつも起こる問題は、リオデジャネイロ大会には間に合わなくても、やがて解決されるかもしれない。だが、ドーピング問題はそうはいかない可能性もある。いま怖いのは、オリンピックがこれまで人々をとりこにしてきた魅力を失っていくことだ。
最近のオリンピックの物語は、いつも開会式の7年前に始まる。IOCが開催都市を選ぶ年だ。2009年のコペンハーゲンで「リオデジャネイロ」と書かれた紙片が封筒から出てきたとき、ブラジルの招致関係者は「涙を流し、互いにキスをし、ポップコーンのように跳ね回った」と、ジュリアナ・バルバッサはリオデジャネイロをテーマにした著書『神の街で悪魔と踊る』に書いている。
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