朝青龍と白鵬が乾杯。断髪式で改めて感じた旭天鵬の「偉大さ」 (2ページ目)

  • 武田葉月●文 text&photo by Takeda Hazuki

 そういう意味では、この日の「引退相撲」は旭天鵬の人柄のよさが反映され、多くの力士から愛されていることがよくわかる、素晴らしい内容だった。白熱した取組が行なわれ、横綱・白鵬が綱締めを実演。さらに、1992年の春場所(3月場所)で初土俵を踏んだ同期生、元小結の旭鷲山こと、ダヴァー・バトバヤル氏と旭天鵬との最後の取組まで行なわれ、ファンの大歓声を浴びた。

 注目の断髪式は、午後に行なわれた。最後の大銀杏姿となった旭天鵬が土俵に上がって、後援者をはじめ、親方や力士ら相撲関係者、そして旭天鵬と交流のある芸能関係者やプロ野球選手など、華やかな顔ぶれが次々に鋏を入れていった。

 ところでその際、会場に訪れたファンの興味のひとつには、元横綱・朝青龍こと、ドルゴルスレン・ダグワドルジ氏がその場に現れるのか、というものがあった。入鋏予定者は約400人。そのリストには、確かにダグワドルジ氏の名前が記されていたが、本当に姿を見せるのか、多くのファンは半信半疑だった。

 優勝25回。白鵬が台頭するまでは、7連覇を達成するなど、絶対的な存在だった。正直、その強さには相撲界全体が恐れをなしていた。だが、2010年初場所(1月場所)後に、突然引退。その辞め方、さらにその後の相撲界との関わりは決して良好とは言えず、朝青龍の登場にファンは懐疑的だった。

 しかし、「旭天鵬」という存在は、朝青龍にとっても別格である。

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