東京五輪へ注目。美女クライマー野口啓代が、ボルダリングJCを制す (4ページ目)

  • 津金一郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro

 勝敗を分けたのは3課題目だった。1完登で並ぶ野口、野中生萌(みほう)、加島智子の3選手に優勝争いが絞られたなかで、最初に登場した野口は1回目のアテンプト()でゴール取りまで進む。だが、伸ばした右手指はわずかにホールドにかからずに落下。2アテンプト目でTOP手前のホールドを持つ手の位置や、左足を置く場所を微妙に修正することで、1回目は届かなかった距離を生み出した。
※ スタートを切ること。完登数が同じ場合は、完登した課題のアテンプト数が少ない選手が成績上位となる。

「純粋に完登したうれしさは、2課題目よりも3課題目の方が大きかったですね。ワールドカップに10年参戦させてもらっている経験が生きました」

 3課題目を野口が登り切った姿を、出番を控える野中と加島が直接見ることはできない。だが、観客の大歓声は彼女たちの耳にも届き、重圧を受けることになった。

 結果は、加島、野中ともに3課題目を完登できず、4課題目は3選手ともにTOPホールドに届かなかった。優勝は野口に決まった。

「ジャパンカップは私にとって特別な大会なので、優勝できて本当にうれしい。これまでの優勝とは比べようがないけど、新鮮な気持ちです」と笑顔が弾けた。

 野口が長年トップランナーとして君臨できているのは、165cmの恵まれた体格や指の保持力の強さ、抜群の持久力、体の柔軟性などとともに、限られた時間内でムーブ()を修正する能力の高さにもある。なぜ、とっさの状況でさまざまなムーブを繰り出せるのか。その理由を訊ねた。
※登るための動き方のこと。課題の中にあるホールドを両手両足のどれで、どう使いながら登るのかを想定する

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