【月刊・白鵬】予期しなかった休場が、横綱にもたらしたもの (4ページ目)
そうして、私自身、だいぶ体を動かせるようになったのは、10月の半ば頃でした。10月8日から始まった秋巡業にも、10月20日の香川・丸亀巡業から合流することができました。
1カ月ぶりの土俵入りをしたときは、館内のお客さまから大歓声を受けて、グッときましたね。「戻ってきたんだな」という思いも強く、かなり気合いが入りました。
その後、愛媛、鳥取、広島、山口と回って、広島市での巡業では、取組にも復帰することができました。それでやっと、横綱としての務めを果たせたのかな、とホッとした感じがしました。
秋巡業に合流する前日には、取り壊されることになった宮城野部屋の稽古場で最後の稽古をしました。初めて稽古をした日のこと、十両に昇進した日のこと、大関、そして横綱になった日のこと……この土俵で過ごした日々が、走馬灯のように蘇ってきました。
私の相撲生活のすべてを見守ってくれた土俵と、まさかこんな形で別れるとは思っていませんでしたが、“横綱・白鵬”を作ってくれた土俵に改めて感謝しました。そして、次のステップに向けてまい進していこうと、新たな思いを心に誓いました。
著者プロフィール
白鵬 翔 (はくほう・しょう)
1985年3月11日生まれ。モンゴル・ウランバトール出身。本名:ムンフバト・ダヴァジャルガル。宮城野部屋所属。2001年3月場所の初土俵から順調に昇進し、2007年7月場所で横綱昇進を果たす。以来、安定した相撲で勝ち星を重ね、数々の記録も打ち立ててきた
4 / 4