スポルティーバ句会。名句はスポーツシーンから生まれる...... (5ページ目)
続いて3点句となった『テニス部のあの子の汗はきっと甘い』(作者・高森勇旗)は、男心をくすぐる作品として評価された。
●堀本評
まず『あの子』というところに、作者の気持ちや思い入れを強く感じますね。おもしろいのが最後の五音を「下五」と言うのですが『きっと甘い』は一音多く、字余りになっている。この字余りによって、さらに甘さが引き立っているように感じたし、ここは巧いこと使ったなと。この字余りからは青春が滲んでいるようなイメージを受けます。
●じゅんいち評
どんなに可愛い子でも汗は絶対に甘くないですし、そこがおもしろくて選びました。そんなわけないやんって(笑)。ただ。硬式テニスのほうが軟式テニスよりは甘いかもしれませんねえ。回転ですか? これは掛かってますね。無回転であれば、『あの子の汗も甘くない』になりますから(笑)。
●作者(高森)評
学生時代、野球部の汗は臭いと言われていたので、それに対するカウンターの意味で作ってみました。汗なんかどの部活も一緒じゃないかと思ったんですが、ひょっとしたらテニス部だけは甘いかもしれないと。これがバスケ部やソフト部だとちょっと違うんですよね(笑)。字余りの箇所はちょっと中学生感を出したかったというか、『きっと』という言葉も可愛かったんで、使ってみたいなと思いました。
「俳句が好き」という高森勇旗氏。解説にも力が入る
人によって解釈が異なる俳句の世界は、あらゆるスポーツの情景を豊かに想像させてくれる。読者の方々は、どの句を高く評価し、おもしろいと思っただろうか?
ところで、まだじゅんいちダビッドソン氏の俳句が講評されていない。果たして次回、じゅんいち氏の『無回転俳句』は読まれることになるのか? 俳人の心も動かせるのか? 注目である。
(つづく)
【profile】
堀本裕樹(ほりもと・ゆうき)
「いるか句会」「たんぽぽ句会」主宰。創作の傍ら、老若男女幅広い層へ俳句の豊かさや楽しさを伝えることをテーマに活動中。近著は又吉直樹氏との共著『芸人と俳人』(集英社)
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