葛西紀明のソチ五輪。「2つの銀メダルよりひとつの銅メダル」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

 2日前のラージヒルは葛西の2位を筆頭に、伊東が9位で清水が10位、竹内が13位という結果だった。結果だけを見ると金メダルを狙える状況だ。だが選手たちは、そんなに甘くないことを承知していた。

 伊東、竹内、清水の3人は、葛西が4番手にいることが心強かったという。自分たちがメダル圏内に踏みとどまるジャンプをしておけば、あとは葛西が何とかしてくれると信頼していた。

 1本目のジャンプ、清水は「葛西さんをはじめみんなに、失敗してもいいから思い切り飛んで来いと言われて気持ちが楽になりました」と、力強い踏み切りで132・5mを飛んでノルウェーに次ぐ2位につけた。

 2番手の竹内は試技でスキーのテール同士をぶつけるミスをして112・5mになっていたこともあり、「自分の出来がカギになる」と思っていた。そして、追い風の中で127mまで飛距離を伸ばして4位をキープ。続く伊東は130・5mのジャンプで、チーム順位を3位にあげた。さらに、最後の葛西も134mを飛んで3位をキープ。4位ポーランドとの差を、18・3点差に広げたのだ。

 2本目は1番手の清水が再びグループ2位の131・5mで、優勝争いをするドイツとオーストリアに追いすがる。続く竹内は上位2チームとの差を広げられたが、3位争いでの安全圏はキープ。伊東は追いすがるポーランドとスロベニアに差をつけ、銅メダル確実という状態で最後の葛西に託した。

 葛西は134mを飛んで日本の3位が確定。3人は葛西に駆け寄って抱きついた。

「僕がラージヒルで銀メダルを獲った時、みんなが自分のことのように喜んでくれた。でも、本当はそれぞれ悔しいだろうから、自分ひとりではなくて4人でメダルを獲りたいという気持ちでした。団体戦の2本目は、飛ぶ前に4位との点差もだいぶ開いているとわかっていたから、飛んでいる時は拓の病気のことや大貴が膝の痛みをおして出ていることが頭の中を駆けめぐった。

 飛び終わってからはずっと、涙を我慢していたんです。でも3人に飛びつかれた時はもう我慢できませんでした。W杯開幕直後と比べればチームの調子は格段に落ちているけど、入院をして五輪に出られるかどうかという状態だった拓とも一緒に飛べて、一緒にメダルを獲れたことがあまりにも嬉しくて、涙を流してしまったんです」

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