検索

【ミラノオリンピック】銅メダルの中井亜美は度胸満点のニューヒロイン「五輪は思った以上に楽しい舞台だった」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Yoshiyuki Komiya

【緊張ゼロで度胸満点の演技】

 フリーで中井は胆力の強さを見せている。

「今までの試合よりも緊張がなくて、緊張ゼロ。いつもどおりの自分というか、いつもの感覚で挑めたのがよかったなって思います」

 彼女はそう言ってのけている。

 実際、『What a Wonderful World』を滑り始めた彼女は、はつらつとして見えた。最終滑走で緊張するはずだが、強張った感じなど微塵もない。まさに度胸満点というか、自分の演技にフォーカスできていることで、余計なものが取り払われているのだ。

 冒頭のトリプルアクセルは、会場が固唾を飲むなかでのジャンプだったが、平然と決めている。これだけで9.71点をマークし、ダブルアクセルは完璧でも5点未満なだけに、強力なポイントになった。SPも含めてトリプルアクセルが、彼女をメダルに引き寄せたのだろう。浅田が得意としたトリプルアクセルをSP、フリーの両方で成功させることで夢を実現したのだ。

 次の3回転ループ+2回転トーループもみごとに決め、練習とは別の姿を見せた。

「メダルのことは置いて、まずはトリプルアクセルをしっかり決めて、あとは楽しむと思っていました。最後まで自分を信じることが大切だなと。今まではトリプルアクセルを(SP、フリーの)両方とも決めたことはなかったので、この大舞台で決められてよかったです。オリンピックで決めるというのが夢だったので」

 中井はそう振り返ったが、一番緊張するはずの五輪で自分の最大値を出した。これが、どれだけの異能か。まさに勝負師の資質だ。

 その後、3回転ルッツ+2回転トーループは乱れたが、3回転サルコウは成功させ、得点源の3回転ルッツ+ダブルアクセル+ダブルアクセルは15.01点を叩き出した。3回転フリップ、3回転ループは回転不足がついたが、ステップシークエンスでは伸びやかで大きな動きで音を拾った。レイバックスピンもレベル4で優雅に決め、どうにか最後まで滑りきっている。

 演技直後、中井はとぼけた表情で指を口元に当て、考え込むように首を傾げた。冷静な洞察は、彼女のおかしみであり、かわいらしさだろう。競技者としては度胸のよさのほうが色濃く見えた。

「ルッツ+トーループの失敗とか悔しさもほんのちょっとあって。(キス&クライでは)どうなるかなって思っていました。(140.45点の)点数が出た時、自分の順位を探したんですが、一瞬わからなくて。名前の横に3って書いてある! って」

 中井はそう言って笑っている。合計219.16点で千葉百音を僅差で上回り、3位に入った。夢を感じて突っ走ってきた自分の人生を、信じきれたのだ。

2 / 3

キーワード

このページのトップに戻る