フィギュア女子「ポスト坂本花織」は? 五輪代表3枠は引退表明のベテランと若手の争い (3ページ目)
【独自の世界観をもつ注目選手たち】
そして五輪出場枠は、この4人だけで争われるわけではない。
これまで2度の五輪出場枠をめぐっては無念の涙をのんでいる三原舞依も、かける思いは人一倍だろう。昨季は痛みを押しての全日本出場で無念のフリー棄権となったが、その実績は坂本や樋口と比べても遜色ない。
来季のプログラム、SPは2022−2023シーズンの『戦場のメリークリスマス』、フリーは2023−2024シーズンの『ジュピター』を選択。プログラムを完成させることで、新境地を見せられるか。
また、渡辺倫果、吉田陽菜、住吉りをんなどもそれぞれ実力者で虎視眈々だろう。
山下真瑚は伏兵と言える。2023年の全日本はSPが2位、フリーが12位。2024年はSPが12位、フリーが4位と振れ幅は大きいが、ジャンプの高さに定評があるだけに、一気に巻き返す"派手さ"を持つ。「不思議な」キャラクターも含め、彼女だけの世界観も魅力だ。
2023年の全日本で山下はこう話していた。
「ちょっと前にトレーニングでトレーナーさんに『曲かけで息が止まっている』と言われて。気をつけたら、その日から調子がよくて、ショートもフリーも息をするのが大事だなって思いました。今まで呼吸を意識したことはなくて、最後で息が切れちゃうのが多かったんです。最初から呼吸を意識して、吸って吐いてをプログラムのなかでやると、最後で動けなくなることはなくなりました」
普通のことを言っているのだが、何か発見した楽しさが伝わってきて、周りを和やかにする。天性の明るさと無垢さというのか。五輪メンバー選考争いを触媒に化けることができたらーー。
夏のリンクで、五輪シーズンが開幕する。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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