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【フィギュア】鍵山優真が振り返る今シーズン 五輪シーズンへ向け「立て直さなければいけない」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【初心に帰って、何もかも忘れて】

 結局、ノーミスの滑りが一度もできなかった今季のフリー。鍵山は、「このプログラムを自分のなかで完成させることができなかったのがすごく悔しいけど、いつかはまた同じジャンルのプログラムをつくって完成させたいと思います」と話す。

「どれだけ調子が悪くても、僕のなかで構成を変えてまとめるっていう考えはいっさいなく、とにかくチャレンジできるものはどんどんチャレンジしていきたかった。4回転フリップが跳べなくてもやろうと思っていました」

 悔しい思いは残ったが、五輪シーズンへ向け、今季の結果は彼の決意を強固にするものになっただろう。

「来季は自分がどういうパフォーマンスをしたいかという目標を、もう一回立て直さなければいけないと、今季を通してすごく実感してきました。4回転フリップは、フリーではしっかり(体を)締めきれて、自分では全力でやれたというポジティブな感覚だけど、今季はなかなか決められなくてすごく悔しい思いもあります。考えることはたくさんあるけれど、オフの時間でしっかりとトレーニングを積み重ねて、来季はまたゼロからのような気持ちで、初心に帰って、何もかも忘れて純粋にスケートができたらいいなっていうふうに思います」

 五輪プレシーズンだった今季、納得がいく滑りをしきれなかった要因のひとつには、宇野昌磨の引退で自分が日本男子をけん引しならなければいけないという思いが芽生えたこともあるだろう。さらにマリニンの急速な進化も、鍵山の焦りを誘発したはず。

 今シーズン、結果を出しきれなかったことがもう一度本来の自分を見つめ直すきっかけになるはずだ。シニア移行から北京五輪シーズンまで順調に成長してきた鍵山にとって、ケガからの本格復帰のシーズンに味わったもどかしさは、さらなる進化への道筋を見極めるための、貴重な経験になっただろう。

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著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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