『週刊少年ジャンプ』のフィギュアスケート漫画・作者が挑むペア競技の本質「少年誌だけど女性の視点を理想化しない」

  • 山本夢子●取材・文 text by Yamamoto Yumeko

『ツーオンアイス』逸茂エルク インタビュー前編(全2回)

2月2日にコミックス第1巻が発売された、週刊少年ジャンプで連載中の『ツーオンアイス』。フィギュアスケートのペア競技を丁寧に描いている漫画家・逸茂エルクさんにインタビュー。前編では、作品に込めた思いや制作の裏側を聞いた。
『週刊少年ジャンプ』で連載中のフィギュアスケート漫画『ツーオンアイス』『週刊少年ジャンプ』で連載中のフィギュアスケート漫画『ツーオンアイス』

【恋愛ものではないボーイ・ミーツ・ガール】

ーーまずは『ツーオンアイス』というフィギュアスケートのペアをテーマにした漫画を描こうと思ったきっかけを教えてください。

逸茂エルク(以下同) 担当編集さんから「ペアどうですか?」と提案されたのが最初のきっかけなんですけど、個人的に中学生の頃からフィギュアスケートの試合をよく見ていてなじみがありました。自分は音楽をずっとやっていたので、スポーツ漫画と言っても音楽や芸術方面も含むものを何か描けるかもと思ったんです。

 また、自分の作家性の話になりますが、『ツーオンアイス』の前に、ボーイ・ミーツ・ガールものの読み切りを数作描かせていただいていました。ボーイ・ミーツ・ガールと言えども恋愛ものではない作品を描いてきたので、フィギュアスケートのペアで恋愛ものとは違う関係性を描けるのではないかと。自分の作風とも合っているかなと思いました。

ーー少年漫画でペアというと現実にはない技を繰り出しそうなイメージがありましたが、そういう背景があって現実に近い物語になっているのですね。

 人間関係を描くのが好きなので、そうなるとすごい技だけでなく実情に近いところで複雑な感情などを描けたらいいなというのが思いとしてあります。

ーー連載が始まる前はどんなことを調べましたか?

 話をつくる段階では、やはり選手の話を聞かなきゃということで、漫画の監修をしていただいている(2012年世界選手権ペア銅メダリストの)高橋成美さんにお話を伺いました。また、男女1組のペアは男子と女子でやっていることが違いますし、物語では男の子が主人公なので男子選手にも話が聞きたいということで、高橋さんとペアを組んでいたこともある柴田嶺さんにも男子視点でのお話をたくさん聞かせていただきました。選手が感じていることは話を聞かせてもらい、技やルールに関しては高橋さんにも手伝っていただきつつ、今も頑張って調べながら描いています。実際に、大会やアイスショーにも足を運びましたよ。

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プロフィール

  • 山本夢子

    山本夢子 (やまもと・ゆめこ)

    スポーツライター。青森県八戸市出身。5歳からフィギュアスケートを習い始め、高校卒業まで選手として各大会に参加。その後、渡米し大学を卒業、就職。帰国後は、コピーライターとして広告制作に携わる。2005年からフリーランス。現在はライターとしてフィギュアスケートの専門誌を中心に執筆中。

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