「大ちゃんは笑っているみたいで『行けるぞ』って」 「かなだい」村元哉中・高橋大輔が世界フィギュアの氷上で通じ合った瞬間 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

●「行けるぞ」氷上のふたりだけの高揚

 5分間練習、ふたりは想像以上に緊張していたという。意外にも、足が震えるほどだった。しかし、向き合ってきた練習を信じることができた。

 そして観客席から「頑張れ」という熱い声援を受けるたび、「頑張らなきゃ」とふたりは奮い立った。

「大ちゃん(高橋)と一緒にスケートを滑れる幸せをかみしめながら、一つひとつ息の合った演技ができました」

 村元は明るい笑顔でそう言って、ようやく手にした完成形のプログラムを心から喜んだ。

「滑る前は、お互い緊張があったと思います。でも曲が鳴った瞬間、世界に入り込むことができました。そこからはふたりの世界で、お客さんに温かく見守られているというか。

 エレメンツを丁寧にクリアしていって、最後のダイアゴナルステップのあたりで、お互いが顔を見て。大ちゃんは笑っているみたいで『行けるぞ』って」

 その高揚感は、ふたりだけのものだろう。

「後半、ダンススピンが終わったあと、バテずにパワーが残っていて。むしろ最後に向け、どんどん行ける感じでした」

 高橋は言う。技量が熟達したことで、使うエネルギーをセーブするようになった。

「四大陸選手権が終わってから、いい練習を重ねてきた成果だと思います。それが自信になって、緊張度が高いなかでも、自身のメンタルコントロールができたかなって。

 お互いの息が合っていたからこそ、体力を削ることなく、よかったのかなと思います」

この記事に関連する写真を見る 最後は修正を重ねてきたコレオリフトを成功させ、アイスダンサーとして一つの境地に達した。

 ふたりは成績を収めるだけでなく、多くのファンを引き入れている。選手のなかでも、アイスダンスに挑戦するケースが増えた。今回の世界選手権で、その魅力はさらに多くの人に伝わっただろう。

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