「大ちゃんは笑っているみたいで『行けるぞ』って」 「かなだい」村元哉中・高橋大輔が世界フィギュアの氷上で通じ合った瞬間 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

●前例を覆した「超進化」

"かなだい"という呼び名で親しまれるふたりは、カップル結成3年目になる。3年で2度目の世界選手権出場が、まず異例。演技の完成までに時間がかかると言われる競技で、前例を覆した。

 今シーズンの世界選手権では、リズムダンス、フリーダンスと観衆を虜にし、総合11位に入った。特にフリーでは作品の世界観も世界中から評価され、レベル4を連発。アイスダンスの日本勢史上最高位に並んだ。

「超進化」

 前向きな姿勢で突き進んできたふたりの、ひとつのフィナーレと言えるだろう。

 言うまでもないが、順風満帆だったわけではない。

 村元はアイスダンス界の第一人者だったが、自身、3年ぶりのアイスダンサー復活だった。高橋にいたってはシングル時代に燦然(さんぜん)とした記録を残しているが、現役復帰からの引退後、30代での別種目の挑戦で、まずは肉体改造が急務となっていた。

 一方、世界は突然のコロナ禍に巻き込まれ、試合どころか、練習も思いどおりにできない状況だった。

「この3年、培ったものがあったからこそ、今回の世界選手権の演技になったと思います」

 万感のフリー後、高橋はその心情を語った。

「コロナ禍で試合経験を積むことができないこともありましたけど、一つひとつ少しずつ収穫することで、この結果になったと思います。

 もし昨シーズン、日本開催の世界選手権だったら、ド緊張してすごく悪い演技をしたかもしれない(笑)。今日の演技で、1年長く続けた意味を見せられたと思います。昨シーズン限りでやめていたら、悔いが残っていたかなと」

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