全日本フィギュア男子の本命・宇野昌磨はミスの気配なし。過密日程にも「できる範囲を把握して最高のパフォーマンスを」と冷静 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo News

【強さを見せたGPシリーズ】

 常勝のアスリートというのは、どれだけ勝利を手にしても飢えている。彼らは目の前の勝利を大いに喜ぶが、あくまで瞬間的のものと捉える。

 結果、そのものよりも技を改善し、思った以上の動きができ、新しい自分になることに快感を得る。おかげで、勝つことにとらわれたり、疲れたりしないのだ。

「ファイナル前から、レベルアップできているって実感のある練習ができていて。フリーの高難度のプログラムにも慣れてきたので。もう一歩、難しくできるように、全日本が終わったら練習でやってみるのもありなんじゃないかって思っています。(自分には)まだ先があるぞって」

 野心的に語った宇野は、やはり王者の精神を持つ。敵は一貫して己自身。それゆえ、つむぎ出す言葉はどんどん哲学的になる。

「久々にファイナルから全日本という日程ですが。試合をやったばかりというのもあって、前から試合に緊張しないほうでしたが、今回はまったくしていなくて。もちろん、大会が開幕してお客さんがたくさん入って、いざ試合になったら緊張するかもしれないですけど、緊張した試合であっても次に活かせるはずって思っているので」

 試合で演技が終わらない。練習から試合、試合から練習。そこに間断がないことで、平常心を保てるのだ。

「まずはケガをしないように。(GPファイナルから帰国して1週間の)ハードなスケジュールだから、できる範囲を把握して最高のパフォーマンスを。いつも以上にやろうとすると、体が追いついていかなくなることもあるので」

 彼は生真面目に、用心深く言う。ものわかりがよさそうにも映る。あるいは、ひとつの境地に達したのかもしれない。

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