全日本フィギュア男子の本命・宇野昌磨はミスの気配なし。過密日程にも「できる範囲を把握して最高のパフォーマンスを」と冷静 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo News

【強さを見せたGPシリーズ】

 2022−2023シーズン、世界王者になった宇野は「自分」をテーマにスタートしている。その自分はエゴイズムではない。とことん自らと向き合う求道的精神だ。

「現状維持では置いていかれるはずで。自分が成長する余地があるからこそ、そこを見せられたらなと思います」

 10月のジャパンオープン、宇野はそう言って4回転半を成功させたイリア・マリニン(18歳、アメリカ)の台頭をむしろ喜んでいた。ライバルによって、触発される「自分」を知っている。つまり、少しも守りに入っていない。

「試合ごとに課題を見つけ、活かすことができました。1シーズンを通して、完成したプログラムを見せられるように」

 10、11月のグランプリ(GP)シリーズを2戦戦ったあとも、宇野はそう振り返っていた。自分と対峙しながら、どちらも逆転優勝で、地力の強さを見せた。

「今シーズン初めて納得のいく練習ができて、それを試合で出せたかなと。でも、今回見つかった課題はステップ、スピンでとりこぼしている点で。一つひとつ磨いていきたいと思っています」

 12月のGPファイナルを制覇したあとも、自己探求は変わらなかった。大舞台で今シーズンのパーソナルベストを更新。完全優勝だったが、意識はタイトル獲得の愉悦よりも課題のほうに向いていた。

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