世界女王・坂本花織、勢いに乗る三原舞依、ダークホース渡辺倫果...GPファイナル女子は僅差のバトル (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【世界女王の意地を見せたい、坂本花織】

 一方、世界女王として新シーズンに臨んだ坂本は、例年よりシーズンインが遅れて9月のロンバルディアトロフィーが初戦。205.33点で2位というスタートだった。

 それでもGPシリーズ・スケートアメリカでは安定感を見せた。SPは後半の3回転フリップ+3回転トーループが3回転+2回転になったが、71.72点を獲得して1位発進。フリーも後半の連続ジャンプの回転不足以外は確実にこなし、演技構成点も3項目すべてを9点台に乗せ、145.89点を獲得。2位のレヴィトに11点弱の差をつけ217.61点で優勝した。

「スケートアメリカは今回で5回目ですが、初めて金メダルを獲れてうれしい気持ちでいっぱいです。ショートでミスをした3回転+3回転をフリーで決められてよかった」

 坂本はそう話し、喜びの表情を見せた。

 だが、次のNHK杯は苦しんだ。帰国後に風邪を引いて1週間練習ができなかったことが響いた。SPは3回転ルッツと3回転フリップの軸が斜めになり、連続ジャンプは回転不足もとられて、過去2シーズンではなかった70点切りの68.07点。キム・イェリム(韓国)に次ぐ2位発進。

 フリーも後半の連続ジャンプは4分の1回転不足で、得意とする最後の3回転ループが1回転になるまさかのミスも。合計は201.87点と落ち込み2位。GPファイナル進出は決めたが、キムを追い上げられなかった。

【波に乗るダークホース、渡辺倫果】

 日本勢の3人目は、ダークホースの渡辺倫果(法政大)。これまでの実績は昨季の世界ジュニア初出場の10位のみで、もともとGPシリーズ出場は予定していなかったが、ロンバルディアトロフィーで坂本を抑えて優勝したことが評価され、NHK杯出場が決まった。そのあとでスケートカナダ出場も追加された。

 1週間前に派遣が決まり調整が難しかったスケートカナダは、SPでは最初のトリプルアクセルと次の連続ジャンプでミスをして6位スタート。フリーは、前半の3回転ループ+3回転トーループはともに回転不足で、最後の3回転ルッツもダウングレードだった。しかし冒頭のトリプルアクセルや後半の連続ジャンプなどはしっかりと決めてSPとの合計を197.59点とした。他の選手のミスも出て、そのまま初出場初優勝という結果になったのだ。

 NHK杯は4位以内でGPファイナル進出が確定する状況だったが、SPはミスが重なって58.36点の9位発進。フリーも3回転フリップは回転不足、最後のルッツにもミスがあり、合計は188・07点にとどまった。

「日本を背負うことや、GPファイナルがかかっているなかで演技することのしんどさを痛感した」と渡辺。演技後は、「NHK杯の経験を生かせたと、次に言える時が来ればいいと思います」とさっぱりした表情で語った。

 得点は伸びずNHK杯の結果は5位。だが、フィンランド大会の結果を受けてGPファイナル進出が決まった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る