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世界王者・宇野昌磨か、「4回転の神」イリア・マリニンか...はたして勝者は? GPファイナル男子の熾烈な戦い (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【手術を経て本領発揮する、佐藤駿】

 そんな三浦と山本に続くように、2019年ジュニアGPファイナルで優勝した18歳の佐藤駿(明治大)。同い年の鍵山とともに将来を期待されたもののシニア移行後の2年間はケガに苦しんできた佐藤が、やっと結果を出してきた。

 昨季は2度にわたって左肩を痛めた。世界ジュニアに出場予定だったが、医師から「手術をすると半年は十分な練習ができない」と言われた。大会を辞退して今年2月に手術。その影響もあって今季の序盤は調子が上がってこなかったが、第4戦イギリス大会では249.03点ながら3位に入り運にも恵まれた。

 さらにフランス大会1位のアダム・シャオイムファ(フランス)がNHK杯で5位にとどまったことで、GPファイナル進出の可能性が高まった。シャオイムファがもし4位だった場合、佐藤はフィンランド大会でマリニンに勝って優勝しなければ進出できなかったが、2位でもクリアできる状況になったのだ。

 進出への緊張感があったフィンランド大会の佐藤は、SPで4回転ルッツを転倒するミスもあって3位発進。しかしフリーでは「いつもどおりにやればいい」という日下匡力コーチの言葉で落ち着いた。

 最初の4回転ルッツや4回転トーループ+3回転トーループをしっかり決める丁寧な滑り。終盤の3回転フリップからの3連続ジャンプが「ノット・クリア・エッジ」と判定されてわずかに減点されただけのほぼノーミスの演技で、ジュニア時代の自己最高を更新する180.62点を獲得。

 マリニンには突き放されたが、合計262.21点を獲得して2位。巡ってきた運を捕まえてGPファイナル進出の6枠目に滑り込んだ。

【安定感を見せる世界王者、宇野昌磨】

 そんな新勢力躍進のなかで、唯一実績を持つ存在の宇野昌磨(トヨタ自動車)は、安定した成績を残した。

 自身初戦のスケートカナダと2戦目のNHK杯はともにSPで課題の4回転トーループ+3回転トーループが跳べずに2位発進。

 スケートカナダのフリーでは、4回転ジャンプやトリプルアクセルの回転不足が多かったが、後半の4回転トーループ+3回転トーループは2.44点加点のジャンプにして逆転し273.15点で優勝。宇野は「SPで失敗した4回転+3回転を、一日の短い期間で『これかな』というのを見つけられたのは次につながる」と納得の表情を見せた。

 NHK杯は靴の調整がうまくいかず、納得できない練習が続いたなかの戦いだったが、6分間練習後にエッジを調節して4回転トーループとトリプルアクセルをしっかり跳ぶことを目標にした。

 4回転ループと4回転サルコウは「練習でも跳べていて自信があった」と話すとおりに確実に決め、課題のトーループとアクセルも成功。合計279.76点で優勝し、GPファイナル進出を危なげなく決めた。

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