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羽生結弦「僕の人生史上でも初めてのこと」に直面。アイスショーで模索する新たな自分 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao

心のなかのジレンマを表現

 そして4本目は、自身が振り付けをした新プログラム『いつか終わる夢』。「ファイナルファンタジー10」のテーマソングで、演出家のMIKIKO氏がプロジェクションマッピングを演出した。氷上に水面や水中の光景が映し出され、滑った「航跡」に沿って木立が姿を現し花びらが舞う幻想的な空間のなかで、ゆるやかに舞った。

「『ファイナルファンタジー10』は、僕はめちゃくちゃ好きな世代なので、いろいろなことを考えて(プログラムを)つくりました。僕の夢はもともと五輪連覇でした。そして、それを果たしたあとに、4回転半という夢を設定して追い求めてきました。でもそれは達成することができなかったし、ISU(国際スケート連盟)公認の大会での初めての4回転半の達成者にはなれませんでした。

 その意味では終わってしまった夢かもしれません。皆さんが期待しているけどできない。だけどやりたいと願う。もう疲れてやりたくないのに、皆さんに期待していただけばいただくほど、自分の気持ちがおろそかになっていって壊れ、何もできなくなってしまう。それでもやっぱり、皆さんの期待に応えてみたい。そんな自分の心のなかのジレンマみたいなものを表現したつもりです」

この記事に関連する写真を見る『いつか終わる夢』でプログラムをつくろうと考えたのは、この曲を流しながら滑っていた時、クールダウンの動きをするとピタリとハマったからだという。その時に思ったのは、多くの人が羽生のクールダウンの滑りを見たがっていたこと。

 そうした経緯で生まれたこの新プログラムを見ていると、長い間競技者として世界のトップを、そして自身の進化だけを見て戦い続けてきた彼の心を、ゆっくりとクールダウンさせるためのプログラムなのかもしれないとも思えた。

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