坂本花織、GPシリーズ初戦優勝も演技後には不満げ。新プログラムは「完成させられたらすごくカッコよくなる」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Getty Images

新プログラムの完成はまだ先

 そんな状況で臨んだフリー『Elastic Heart』。10月8日のジャパンオープンではノーミスで滑っていただけに、デュブレイル氏もいる場でいい演技を見せたいという思いは強かった。

 その思いを前面に出すように丁寧な滑り出しをして、最初のダブルアクセル、3回転ルッツ、3回転サルコウはGOE(でき栄え点)加点をもらう安定したジャンプに。次のコンビネーションスピンもレベル4で、3回転フリップ+2回転トーループもきれいに跳んだ。

 大きい動きで滑ったステップシークエンスはレベル3になったが、SPではミスをした3回転フリップ+3回転トーループをしっかりと決め、最後までノーミスで乗りきるかに見えた。

 しかし、フライングシットスピンのあとのダブルアクセルで、着氷にタイミングを崩してしまい、間をあけてから3回転トーループをつけたが、次の2回転トーループをつけられずに3連続ジャンプにできなかった。さらに2本目の3回転トーループは回転不足と判定され、0.91点の減点をされる結果に。

 そのあとのコレオシークエンスから盛り返して3回転ループも流れのなかで不安なく決めたが、演技終了直後、自分自身に「やってしまった」と言っているような表情になっていたのだ。

 それでも結果は、演技構成点の3項目では全選手中ただひとりの9点台を並べ、貫禄を見せてシーズンベストの145.89点を獲得。SPとの合計は217.61点。2位に10点以上の差をつけて優勝した。昨季のスケートアメリカの215.93点を上回った結果だ。

「シニアに上がってからの5シーズンで、練習より試合のほうがよかったのは1、2試合だけで、ほとんどの試合は練習よりうまくいっていません。練習で120%以上にしないと、試合で100%を出すのは無理だと思っています」

 坂本はまだ新しいプログラムを思ったほど滑り込みきれていない。自分のものにはしきれてない状態だが、このスケートアメリカからシーズン本番が始まった。今季のGPシリーズ初勝利は、さらなる加速を期待させるものになった。

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