検索

「ドラマみたい」だった全日本フィギュア 三浦佳生、山本草太、友野一希......歓喜と涙の物語

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 12月20日、東京。全日本フィギュアスケート選手権、男子シングルは混沌のなかにあった。今大会はミラノ・コルティナ五輪出場がかかり、いつも以上にリンクで情念がうごめいていた。不安と希望のうねりが、極上のドラマを生み出したーー。

全日本選手権で表彰台に上がった鍵山優真(中央)、佐藤駿(左)、三浦佳生(右)全日本選手権で表彰台に上がった鍵山優真(中央)、佐藤駿(左)、三浦佳生(右)この記事に関連する写真を見る

【五輪の道が閉ざされたとしても......】

 フリー最終グループの6分間練習、6人の選手がそれぞれの決意を固めたようだった。

 ショートプログラム(SP)では、昨年王者の鍵山優真が堂々とトップに立っていた。今シーズン進境著しい佐藤駿は5位スタートも、3位に入ったGPファイナルの結果を考えれば、鍵山とともに五輪は当確に近かった。

 残る3人目の出場枠を争う三浦佳生は2位に躍進し、ベテランの域に入った友野一希が4位につけ、一騎打ちの様相を呈していたが......。

「出しきっても難しいスタートですけど、いい練習を積み重ねてきたので、すべてを出せるように」

 SPで6位と出遅れた山本草太はそう言って、フリー最終グループ1番手でリンクに立っている。まさに乾坤一擲、冒頭の4回転サルコウをきれいに降りると、熱のこもった拍手を浴びた。昨年の全日本で表彰台に立った実力は本物だ。

 ただ、そのあとのトーループ2本は着氷が大きく乱れ、セカンドもつけられない。五輪への道が閉ざされたと心が折れても無理はない。しかし、そこで会場の手拍子が重なり合う。再び命を与えられたような山本は覇気を取り戻し、最後まで滑りきっている。順位以上にスケート人生を示し、万雷の拍手を浴びる彼の姿はまぶしかった。

「気負わずに、順位を考えずにやります」

 大会前日練習、そう語っていた佐藤は2番手で滑走し、SPから挽回した。最後の3回転ルッツこそ乱れたが、6本のジャンプを完璧に成功。GPファイナルでも3位だったように、今シーズンの急成長を象徴する滑りだった。188.76点という高得点でフリー1位、五輪出場を確実にした。

1 / 3

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

フォトギャラリーを見る

キーワード

このページのトップに戻る