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「ドラマみたい」だった全日本フィギュア 三浦佳生、山本草太、友野一希......歓喜と涙の物語 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【ライバルとの巡り会いに「持っていたな」】

 そして真打登場となったのが三浦だろう。冒頭からループ、サルコウ、トーループの4回転3本をすべて成功。これだけで高得点を叩き出した。

「緊張した空気のなかで、最初の3つの4回転をバチッと決められて、『いっただろ』って思いました。後半はバテちゃったんですけどね」

 三浦が振り返ったように、前半でほぼ勝負を決めた。165.53点でフリー3位、総合でも3位で表彰台に立っている。

「思ったよりも重い。努力の分の重みが詰まっているのかなって」

 取材エリアでメダルをかけながら、三浦は感慨深げだった。スケート人生における勲章は、五輪出場と同義だ。

「(鍵山)優真や(佐藤)駿と一緒の表彰台に上がれるなんて、漫画みたいなことあるんですね。ふたりとはジュニアから一緒にスケートをやり、仲良くなってオフも過ごし、未来図を描いて......本当にドラマみたいです。表彰式も泣きそうになるくらいでした。ふたりがジュニアの頃からいなかったら、4回転も試みてないし、全日本で表彰台に乗れていない。ふたりとの巡り会いは"持っていたな"って思いますね」

 三浦は湧き上がる喜びを持て余すように、明るい声を出していた。

 一方、鍵山は無念さで声も小さくなった。連覇に成功したが、トリプルアクセルがシングルになるミスもあり、自分を許せないのだろう。キス・アンド・クライではタオルで顔を覆い、涙を流していた。

「弱いな」

 自らを叱咤する言葉を繰り返した。優勝に甘んじない。それは五輪に向けた決意表明だった。

「自分の正解を見つけるしかない」

 鍵山は決然と語ったが、その覚悟がエースの証明だ。

 全日本の男子シングルはひとつの幕を下ろしている。人生をかけたスケーターたちの物語があった。それは全日本の歴史となり、さらなる混沌を生み出すのだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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