宇野昌磨、自分磨きのシーズン。「これまではネイサン選手やユヅくんに勝ちたいと思ってやってきたけど...」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「自分を磨く」意識

 自分を冷静に見つめ、疑問をひとつずつ解決し成長していこうという思い。それはネイサン・チェン(アメリカ)が学業に専念し、羽生結弦が競技から退いたことでさらに強くなった。

「これまではネイサン選手やユヅくんに勝ちたいと思ってやってきたが、今シーズンのオフからは自分を磨くことを意識してきました」

 目標とする選手が戦いの場から離れた今、自分が競い合う相手は自分自身にしなければいけないと考えたのだ。

 だが、7本のジャンプをすべて4回転の構成に挑戦しているマリニンの姿を見て、その気持ちは軽くなったようだ。彼を見て「違う強い選手が現れるものだなと思った」と話す。

「彼(マリニン)のすごさは4回転アクセルと跳ぶことだけではなく、それ以外の4回転がすごいこと。柔軟性もあってケガをしにくいジャンプをしていて、無駄な力が入らず、すごくラクに安定して跳んでいる。僕はそれに刺激を受けたし、彼ができるなら僕にも何かやり方があるのではないかと思えました」

 まだシニアデビュー間もないマリニンについて、「これからもどんどん伸びていくはずだし、1〜2年後は圧倒的な選手になる存在だと思います」とも言う宇野。大きなモチベーションになっているはずだ。

 だがその反面、マリニンの演技を見たからこそ自分の気持ちをしっかりコントロールしなければいけない、という思いも膨らんできた。

「僕の場合は夢中になると練習をやりすぎてしまうことが多い。刺激を受けたけど、そこでムキになってしまうと一歩間違えばケガをしてしまうし、夢中になるのとムキになるのは違うので、『コントロール』という言葉を自分に言い聞かせています」

 さらに進化しようとする宇野は、24歳のスケーターとして今季の冷静な一歩をジャパンオープンから踏み出した。

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