羽生結弦が北京五輪後、初の演技。フードで顔を隠して滑り始めた『Real Face』に込めた思いとは (2ページ目)
素顔を現わすとキレのいい滑り
そして、スガ氏の生声が会場に響き渡ると、フードを払いのけて曲に合わせたキレのいい滑りを爆発させた。
2018年平昌五輪でソチ五輪に続く連覇を果たしたことで、羽生は幼い頃から目指した目標を達成できた満足感を感じていた。それからは、新たな自分の道を模索しながら挑戦と戦いを続けてきた。その挑戦と覚悟を決めて臨んだ2022年北京五輪では、敗れはしたが自身で納得できる演技とし、長く続いた戦いにも心のなかではひと区切りをつけたはずだ。
次はどこへ進もうかと考えているだろう今、彼は過去の自分にもひと区切りをつけてもう一度、"素のままの自分"として歩み出そうとしているのではないか。そう感じさせる振り付けだった。そして演技の途中で頭から被るコップ1杯の水も、彼にとっては"禊ぎ"のようなものとして意識しているのではないだろうか。
2019年に『マスカレイド』を演じた時、羽生は「本当に最初から最後まで全力で演じるので、すごく疲れるしヘトヘトになります」と笑いながら話していた。それだけの思いを込め、思いの丈をすべて表現しようとしたプログラムだった。
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