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井上尚弥は現代のボクシングビジネスに一石を投じた 2026年はどのような立ち位置になるのか?

  • 杉浦大介●取材・文 text by Daisuke Sugiura

井上尚弥(左)と無敗王者のまま引退したクロフォード photo by Getty Images井上尚弥(左)と無敗王者のまま引退したクロフォード photo by Getty Images

前編:「モンスター」井上尚弥のPFPの位置付けと2026年展望

【無敗王者の華麗な幕引きか? 年間4度のタイトル防衛か?】

 2025年の年末から年明けにかけて、アメリカのボクシング界でもこれまで以上に"Naoya Inoue"の名前を耳にする機会が多かった。この時期、主要メディアをはじめ、各ボクシング媒体が発表する年間表彰の選定が続いたからだ。

 現地1月17日、由緒ある全米ボクシング記者協会(BWAA)の年間賞ノミネート選考会議がオンラインで行なわれた。筆者も出席した話し合いの結果、井上尚弥はテレンス・クロフォード、ジェシー・"バム"・ロドリゲス、ドミトリー・ビボル、レネ・サンティアゴとともに"BWAA Fighter of the Year(年間最優秀選手)"の最終候補に含まれた。

 同賞はクロフォード、井上の一騎打ちという見方が一般的である。クロフォードは昨年9月、サウル・カネロ・アルバレスとのメガファイトを制して5階級制覇を果たすとともに、3階級で4団体統一という史上初の偉業を達成した。一方、井上は4試合を行い、前評判が高かったムロジョン・"MJ"・アフマダリエフを完封するなど安定した強さを見せつけた。

 パウンド・フォー・パウンド(PFP)でもトップ3を堅持してきたこの両雄。いったいどちらが年間MVPにふさわしいか、という議論がしばらく多くのメディアの間でも催されてきたのだ。

「私はクロフォードに投票した。年1試合だけだったが、歴史的に非常に意味のある一戦だった。井上の試合数を評価するという主張も非常に妥当で、考慮されるべきだと思うが、勝った相手のすべてがハイレベルだったわけではない。私が見た限り、ほかの多くのメディアもクロフォードを選出しているようだ」

『リングマガジン』のマヌーク・アコピャン記者がそう述べていたとおり、最終的にはクロフォードを選出する関係者が多そうではある。

 スーパーウェルター級から一気に2階級を上げて"カネロ"に挑戦し、クロフォードが完勝した一戦のインパクトはそれほど大きかった。ラスベガスのアレジアント・スタジアムに7万482人の観衆を動員し、『ネットフリックス』で全世界4100万件以上という莫大な視聴者を集めた、いわゆる"Event of the Year(2025年最大のイベント)"。その主役を立派に務め、同時にその後に42戦全勝(31KO)のまま現役引退表明したこともあって、いわば功労賞的な趣でクロフォードを年間MVPに選ぶメディアもいたかもしれない。

 クロフォードの引退発表間際に関係が悪くなったWBC(世界ボクシング評議会)こそ井上を年間最優秀選手に選んだが、それ以外はやはりクロフォードを選出する媒体、団体が多い。井上の強さを認識しているファン、関係者も、クロフォードが同賞に選出される結果自体に特に異論はないのではないか。

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著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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