荒川静香のトリノ五輪の快挙から15年。「金メダルを取るには?」の答え (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

 荒川は声援を麗しげに受け止めたが、それは女王になることが宿命であるかのようだった。ポーズをとって、会場に『トゥーランドット』が鳴り出した瞬間、耳につけた飾りが少しだけ揺れた。

 冒頭、3回転ルッツ+3回転ループを跳ぶはずだったが、これを回避し、2つ目を2回転にしている。

「コンビネーションの1つ目を飛んだ瞬間に、"このままでは(3回転を失敗した)ダブル判定になる"と。これでは損だなと思いました」

 彼女は説明したが、傑出した実務的な判断力だ。

 その一方、荒川の演技は誰よりも華やかだった。深いエッジで躍動感を生み出し、スパイラルは優雅で曲の荘厳さを引き立てた。何より、フリーにイナバウアーを取り込んだのは、信念の証だろう。前後に足を開いてつま先を180度、真横に滑る足技だが、彼女の場合、上半身を大きく後ろに反らすだけに肉体的消耗が大きく、直後のジャンプに負担があったが......。

「(美しいが、直接の点に結びつかないという議論に)イナバウアーは自分の持ち味なので、どうしても入れたいと思いました。皆さんに『もう一度見たい』と思わせる演技をする。それが、自分にとって一番の目標なので」

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