本田望結が追求する表現。目指す「拍手が起こらない演技」とは? (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 幼い頃から芸能界という"大人の世界"で生き、さらにフィギュアスケートに人生を懸けてきた少女は「表現」を追求するーー。

「表現がすごいって言われるのは嬉しいし、『一番でいたい』って思います。でも、表現の仕方っていろいろあって。例えば歓声や熱量が選手に届いて、その熱量を選手が反射させ、また応援が盛り上がって。それは一つの正解だと思いますが、私がスケートで目標にしているのは、拍手が起こらないことです。

 お芝居やドラマを見ているときに、目を凝らすことがあるじゃないですか? 携帯電話を見るのも忘れるように集中するというか。前のめりになる感じで。フィギュアスケートでも、私はそれがほしくて。

 一度、ジュニアだった頃に完璧な演技ができたことがあったんです! 途中で一切、拍手が起こらなかった。特にステップとかで、いつもは起こるところで起こらなかったんです。曲の主人公を私が演じて、観客の皆さんもその世界に入ってもらえたのか。演技が終わって、素の私に戻ったと同時にお客さんも拍手をする瞬間があって、『曲の物語が伝わった』って嬉しくて。

 私は女優としてのお仕事をやっているので、拍手や歓声はうれしいですが、私の演技や表現が伝わっているなら、じっと見てもらえるのが正解な気がして」

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