2020.12.14

羽生結弦がケガをして考えたこと。表現へのこだわりと向き合い方

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

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『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』 
第Ⅳ部 芸術性へのこだわり(4) 

数々の快挙を達成し、男子フィギュアスケートを牽引する羽生結弦。常に挑戦を続ける桁外れの精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱を持つアスリートの進化の歩みを振り返る。世界の好敵手との歴史に残る戦いや王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。

2016年、クリケット・クラブにて取材に応じた羽生結弦2016年、クリケット・クラブにて取材に応じた羽生結弦  2015ー16シーズン、グランプリ(GP)シリーズのNHK杯、GPファイナルで歴代世界最高得点を連続して出した羽生結弦。その偉業を達成した翌年、平昌五輪前季の16ー17シーズンで、羽生結弦はまた新たな挑戦へと一歩を踏み出した。

 このシーズンのショートプログラム(SP)は、プリンスの『レッツ・ゴー・クレイジー』。羽生は、プリンスの言葉に感銘を受け、「リスペクトしている」とこの曲への思い入れを語った。フリーは、久石譲の曲を使用した『ホープ&レガシー』。アップテンポのポップな曲と、自然を表現するゆるやかな曲。動と静。正反対の表現をしたいと考えたのだ。

 16年9月には、羽生が練習拠点としていたカナダのクリケットクラブで練習が公開された。そこでトリプルアクセルや4回転サルコウ、4回転サルコウ+3回転トーループ、4回転ループを跳んだ羽生の表情には、緊張感も漂っていた。

 SPの曲かけ練習になると、イーグルから入った4回転ループをしっかり決めた。前季とは違った直線的な鋭さがあるステップ。そして、曲かけ終了後すぐに、曲中で失敗していたトリプルアクセルと4回転サルコウ+3回転トーループを体に確認させるように成功させた。