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羽生結弦が進む自らの道。「フィギュアスケートの完成形を目指して」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 それに対して『秋によせて』と『Origin』の場合、自分のプログラムとして完成させようと思っても、幼いころに憧れたジョニー・ウィアとエフゲニー・プルシェンコの演技が、羽生の頭の中に強烈に残っているものだった。だからこそ、それを完成させようとした時に、100%自分のものにすることができない、と考えたのだろう。

 15年のGPファイナルでNHK杯に続いて歴代世界最高得点を出したあとで、羽生は、ハビエル・フェルナンデスがフリーで200点台に乗せてきたことに言及しながら、「ジャンプや技術だけではなく、芸術性も兼ね合わせたフィギュアスケートとしての完成形を目指していきたい」と話していた。

 だがその後の4回転時代突入で、勝つためにより多くの高難度のジャンプを入れなければならなくなり、羽生はそれにしっかり対応して結果を残してきた。その点で言えば、今回彼がやろうとしていることは、自分の「フィギュアスケートを突き詰めたい」と思い始めたプログラムに回帰し、それでどこまで戦えるかを確認してから次へ進みたいという決意でもあるのだろう。

 五輪連覇を果たし、自分の原点として考えたのが、幼い頃に憧れたふたりのスケーターが使用していた曲に挑戦して、自分なりの世界観を作り上げることだった。それを実践したからこその今回の決断なのだろう。

 その勝負のプログラムで世界選手権に挑んだあと、彼がどんな道を模索していくのかも、大きな楽しみになってきた。

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