ケガの癒えた羽生結弦に不安なし。「絶対に勝てる」シンプルな考え方 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA/Noto Sunao

「体力面にはかなり不安がありました。フィギュアスケートは陸上でできるものではないので、氷上でのジャンプの回転やスケートの感覚なども戻せるのかも不安でしたね。でも、再び氷の上で滑れるようになってからの1カ月で、『五輪に出られるな』と思えるくらいの練習を積むことができました。

 ケガをしてからここまで、特につらかったことはなかったです。ひたすらやるべきことをやってきたし、『これ以上できない』ということをやってきたので、もう何も不安要素はないですし、なんの問題もありません」

 この日の記者会見には、多くのテレビ局や記者、カメラマンが集まった。その人だかりを見た羽生は、「たくさんのメディアを通して、さらに多くの人が自分のことを見てくれているんだ」という気持ちになったという。国民的な注目は大きなプレッシャーになるかもしれないが、久しぶりに滑ることができる試合で、平昌五輪のリンクでその視線をすべて受け止めようとしている。

 ここ数年の男子フィギュアスケートでは、若い選手たちが数種類の4回転をプログラムに入れるようになった。羽生の"負けじ魂"にも火がついて今季は4回転ルッツにも挑戦した。しかし、それが大きなケガを招いてしまったことで、今は「4回転の種類が少なくても、自分が完璧な演技をすれば勝てる」と、シンプルに考えるようにしているのだろう。

 難度の高さだけでなく、完成度を求めたい。そう意識が変わったことが、今の羽生の強みになる。

「完成度が高い、熟成した演技で勝負したい」

 ケガを乗り越えたことで見えた、羽生が理想とするフィギュアスケートの形。それを完璧に演じ切った先に、表彰台の頂上が見えてくる。

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