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宇野昌磨が優勝より難ジャンプ挑戦を
優先する理由は「羽生結弦の影」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 その宇野を上回り、103.32点でトップに立ったのはネイサン・チェン(アメリカ)。後半の4回転フリップで着氷を乱して0.69点の減点があり、冒頭の4回転ルッツ+3回転トーループは加点が0.11でトリプルアクセルは0.71の加点と正確さを欠くジャンプだった。ステップは加点を2.10にして滑りのうまさを見せてはいたが、ジャンプが完調ではないことをうかがわせた。

 宇野とチェンのふたりにとって、この大会は平昌五輪の前哨戦でもある。だが、男子をリードする羽生結弦がいないため、彼らのモチベーションも上がりきっていないことは確かだ。宇野は、初めて経験する「羽生不在のGPファイナル」の感想を聞かれ、苦笑しながら「ファイナルではなくて、普通のGPシリーズの1試合のような気がする」とも話していた。

 また、宇野は、フリーについて、シーズン初戦のロンバルディア杯で成功させた4回転サルコウを「調子が悪くてもやります」と明言。

「明日は4回転サルコウを含めて不確定要素がたくさんあるフリーになると思いますけど、できるジャンプの4回転トーループとトリプルアクセルはしっかり跳べるようにして、そのうえで挑戦を楽しみたいと思います。ここまで満足していない試合の方が多いシーズンでした。初戦で成功した4回転サルコウを入れる試合ができない状態が続いたので......。でも、今年ですべてを完成させようと思っているのではなくて、これからもどんどん成長したいと思っています。だからこそ、新しいものをどんどん取り入れて成長していきたい」

 成長したいという思いは、昨季から難度の高いジャンプ構成に挑んでいるチェンも同じだ。ふたりはともに、ここで優勝すればシニアで初の世界タイトル獲得となるが、勝つことよりも挑戦を優先しているのは、「追いつき追い越したい」と思っている羽生結弦という存在がいるからだろう。平昌五輪での羽生への挑戦権──それを得るための宇野とチェンの戦いが、フリーで繰り広げられる。

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