「焦らずやっていけば大丈夫」。浅田真央が語った復帰への手応え (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

「あの頃は自分を大人っぽく見せたいと思ってアップアップしていましたが、今はいろんなことを経験していろんな思いを持って滑っているので、自分から何か作ろうと思って滑っているのではなくて、これまで経験してきたことを自然に出せればいいなと思っています」

 こう語ったとおり、表現面では年齢を重ねたことで一皮むけた浅田だが、その一方で、体力面や技術面では、現役を続行するうえでの不安要素もある。競技会は緊張感の中で持っている力を発揮しなければいけないが、そのためには精神的にも肉体的にもさらに鍛え上げる必要がある。アイスショーと競技はまったく別次元のもので、選手たちが口にする「試合勘」が必要になる。

 1年間の休養中、浅田はリンクを離れてそれまでできなかったスケート以外のことに取り組んできた。もちろん、定期的にスケート靴を履いて滑っていただろう。ただ、やはり競技者としてのマインドを一旦外した生活を送っていたことの影響は、それなりにあるはずだ。

「1年間休養したことで、自分の何が変わったかは分かりません。それでも、毎年この時期にあるアイスショーで滑ってみて何も変わったところはなく、いつもと同じ気持ちで滑れましたし、よかったんじゃないかなと思っています。また、今シーズン一緒に戦う選手も同じショーに出演しているので、その選手たちからたくさん刺激をもらって、自分も頑張らないといけないと思いました。

(現役続行を決めて)練習を始めたときは、自分でもこういう(思っていることができない)感じなんだという気持ちがありました。でも、練習を積み重ねていくなかで、感覚や自分の力が戻ってきているなという実感が出てきているので、これから練習を積み重ねていくしかないです。シーズン初戦(10月3日のジャパンオープン=さいたまスーパーアリーナ)までまだまだ時間があるようでないですね。練習を再開したときは焦りも強くて、すぐに一昨季のレベルのものをやろうとして納得できない状態に陥ったのですが、これが現実だなと感じました。まだ今の状態で一昨季のレベルのものはできないですけど、日々の練習ではできているという実感はあるので、少しずつ焦らずやっていけば大丈夫だと思っています」

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