【ボクシング】山中慎介が再認識した井上尚弥の「1発の強さ」 敗れた中谷潤人が手に入れたものは何か? (4ページ目)
【33歳という年齢、引退へのカウントダウン】
ーー井上選手は現在33歳。引退についてコメントすることも増えてきました。
「ボクサーとして一番動けるピークの終盤に差し掛かっているのは間違いないですね。軽量級の場合、多くの選手は35歳前後でピークアウトしてきます。これはどんな名チャンピオンでも逆らえないところ。僕自身も、引退したのは35歳の時でしたから」
ーー山中さんご自身も、現役晩年には少し感覚のズレを感じたことがあった、と伺っています。
「自覚はありましたね。ただ、『認めたくない』という意地もあるし、『練習では動けているから大丈夫だ』と思い込もうとするんですけど、『あれ? いつもならこのパンチは避けられているのにな』とか、『いつもならこの踏み込みで、相手にパンチが届いているな』という、本当に微妙なズレが生じてくるんですよ。数センチ、コンマ何秒の世界なんですけどね」
ーーその数センチが、トップレベルでは命取りになると。
「そうですね。それまでは届いていた踏み込みで届かないわけですから、近い距離で闘うようになる。そうすると相手のパンチももらうようになる。そんな感じで少しずつズレていく。ピークアウトを迎えるタイミングと、階級を上げるタイミングが重なるとリスクは増します。井上に関しても、それは例外ではないのではないでしょうか。本人も大橋(秀行)会長も、フェザー級に上げるタイミングは慎重に見極めて決めるでしょう」
ーー 一方で、ジェシー"バム"ロドリゲス(米国/WBA・WBC・WBO 3団体統一世界スーパーフライ級王者)との対戦の話も浮上しています。
「バムは強いですが、井上と戦うにはサイズが足りないのは否めません。今年6月にWBA世界バンタム級休養王者のアントニオ・バルガス(米国)と3階級制覇を懸けて対戦することが発表されていますが、仮にそれをクリアしても、井上のいるスーパーバンタム級はもうひとつ上の階級ですからね。仮に決まったとしても、勝負論はあまり感じないです。井上が普通に勝つでしょう」
ーー井上選手は少し休むとの意向ですから、その間にどんな動きがあるのか注目ですね。
「井上がどの階級で、どの場所で、誰とやるか。そういった動きが続くでしょうね。今回の中谷戦で、井上はまた違う引き出しを見せましたし、その先がどうなるか、まだまだ目が離せません」
■後編:井岡一翔を破った井上拓真を「完璧」と評価も「倒しきる展開も見たい」 那須川天心との再戦など今後は?>>
(文中敬称略)
【プロフィール】
■山中慎介(やまなか・しんすけ)
1982年滋賀県生まれ。元WBC世界バンタム級チャンピオンの辰吉丈一郎氏が巻いていたベルトに憧れ、南京都高校(現・京都廣学館高校)でボクシングを始める。専修大学卒業後、2006年プロデビュー。2010年第65代日本バンタム級、2011年第29代WBC世界バンタム級の王座を獲得。「神の左」と称されるフィニッシュブローの左ストレートを武器に、日本歴代2位の12度の防衛を果たし、2018年に引退。現在、ボクシング解説者、アスリートタレントとして各種メディアで活躍。プロ戦績:31戦27勝(19KO)2敗2分。
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著者プロフィール
篠﨑貴浩 (しのざき・たかひろ)
フリーライター。栃木県出身。大学卒業後、放送作家としてテレビ・ラジオの制作に携わる。『山本"KID"徳郁 HEART HIT RADIO』(ニッポン放送)『FIGHTING RADIO RIZIN!!』(NACK5)ウェブでは格闘技を中心に執筆中。レフェリーライセンス取得。ボクシング世界王者のYouTube制作も。
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