【ボクシング】ウェルター級の日本の希望、佐々木尽を支えるのは71歳のトレーナー 3人の息子と一緒に世界の頂点へ (4ページ目)
大胆な約束。しかし、言葉には責任を持った。
特別な才能など感じないイチ練習生。アマ戦績は1勝3敗。孫ほど歳の離れた教え子が、大きな夢を語ってくれたうれしさはあるにしても、なぜそこまで支えようと決めたのか。
答えに少し時間をかけたのち、廣隆は、やはり淡々と、しかし、言葉に力を込めた。
「まっすぐ、私を見据える澄みきった瞳に、嘘を感じなかったから......かもしれないね」
澄みきった瞳――。
廣隆は、尽の瞳に、遠い昔、世界を共に目指した初めての愛弟子の姿を重ねていた。
尽と同じように、素直で真っ直ぐ。
名前は、廣隆が着た色褪せた赤いジャンパーの背中に記された「KO PRINCE/BOXING TEAM」の白い文字の間に、青い糸で刺繍されていた。
ジャンパーはところどころ補修の跡が残り、白く擦り切れている。
廣隆はそれでも、34年、袖を通し続けてきた。
脱げない、のではない。
脱がない、のである。
「私は、物持ちがいい性分なんですよ」
そう照れたように笑う。
青い糸で刺繍された文字は、
「YUJI WATANABE」。
1990年代、国内屈指のファイターとして名を馳せた渡辺雄二。
著者プロフィール
会津泰成 (あいず やすなり)
1970年生まれ、長野県出身。93年、FBS福岡放送にアナウンサー入社。プロ野球、Jリーグなどスポーツ中継担当。99年に退社しライターに。第10回Numberスポーツノンフィクション新人賞受賞。主な著書に『マスクごしに見たメジャー 城島健司大リーグ挑戦日記』(集英社)、『歌舞伎の童「中村獅童」という生きかた』(講談社)、『不器用なドリブラー』(集英社クリエイティブ)など。
【写真】日本人未踏、ウェルター級世界王者を目指す佐々木尽
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