【ボクシング】ウェルター級の日本の希望、佐々木尽を支えるのは71歳のトレーナー 3人の息子と一緒に世界の頂点へ (3ページ目)
東京都心から離れた八王子にありながら、同ジムは尽以前にも個性溢れた、階級を越えた有力ボクサーを、多数輩出してきた。
廣隆は、2015年に会長職を長男・一生(いっせい)に譲り、プロモーター業はまかせて、自分はトレーナー業一本に絞った。70歳を過ぎた今は現役ボクサー相手にミットを構えるのが厳しくなった。三男・廣介がミットを構え、身振り手振り、言葉で伝える。次男・玄太は事務局を支えるなど、父と3人の息子でジムを運営している。
「尽は、少しずつかもしれないけど、間違いなく成長している。焦ることはない、大丈夫だから」
廣隆は、はやる気持ちを抑えきれない様子の愛弟子を、穏やかに諭した。
尽が入門したのは、中学1年の時。当時は、小学生の頃から続ける柔道に力を入れており、東京都大会で2位という成績も残した。当時はオリンピック出場が目標だった。
ボクシングの練習は週2、3回程度。特別、目に留まるような才能は感じなかった。ただ、尽自身は、徐々にボクシングの魅力に取り憑かれ、いつしか柔道よりも熱を入れるようになっていた。
「『つかんで相手を投げる』『押さえ込む』よりも、『殴って倒す』という競技のほうが、性に合っていると思いました。何より、"プロ"と名のつくアスリートに対する憧れも強かったですね」
転機は2017年、春――。
定時制高校に合格した尽が、報告に来た日だった。
中屋トレーナーが着る赤いジャンパーの背中には、かつての愛弟子の名前が入っているこの記事に関連する写真を見る
当時について廣隆は、2018年3月20日のジムのブログ日記でこう綴っている。
***
今、高一でアマ戦績は1勝3敗、今月プロテストを受けます。中学までは柔道をしていて、ボクシングは週2・3回の練習でした。
高校に受かった日『今日からボクシング一本で行きます。チャンピオンになります!』と頼もしい宣言に、驚きと共に嬉しさが込み上げて来た一年前を思い出します。一年でプロテストを受けられる所まで来たかと感慨深いものがあります。
(原文ママ)
***
プロテストは無事合格。廣隆は、尽にこう告げた。
「ボクシングだけに専念できる環境を整える。生活費は、ファイトマネーだけで賄えるようにするから」と――。
3 / 4

