【ボクシング】山中慎介が語る、中谷潤人が「井上尚弥以外はメッタ打ちにされた」強敵相手に直面したスーパーバンタム級の壁 (3ページ目)
【知名度のない実力者】
――エルナンデス選手は、知名度こそ高くありませんでしたが、蓋を開けてみれば相当な実力者でした。
「それは、ボクシング界でよくあることなんです。マッチメイクに恵まれなくて、なかなかスポットライトが当たらなかったケースもあると思います。エルナンデスの場合は、どこかが突出しているわけではないけれど、全体としてレベルが高い。昨年9月に武居由樹(大橋)をTKOで下したクリスチャン・メディナもそうでしたが、ネームバリューはなくても実はめちゃくちゃ強い、というケースはよくあります」
――エルナンデス選手も、大橋ジムでスパーリングパートナーを務めた際に、その実力の片りんを見せていたそうですね?
「大橋会長が『(井上)尚弥以外はメッタ打ちにされた』と語っていましたし、大橋陣営も彼の強さを認めていたようですね」
――エルナンデス選手が前に出てくるのに対して、中谷選手はジャブを細かく出していく場面もありましたが、前進は止まりませんでした。
「序盤のように距離を取ろうとしても、中盤以降は難しかったですね。かといって自分から下がれば、追い込まれるだけになってしまいます。おそらく、ジャブを出しながらエルナンデスの動きを見て、出てきた局面で合わせようとしていたんじゃないかと思います。それでも、エルナンデスはプレッシャーを強めて距離を徹底的に潰してきました。そこがエルナンデスの土俵ですからね」
――中谷選手は、アンドリュー・モロニーをKO(2023年5月20日)した左フックを狙っているようなシーンもありましたね。
「何度か狙っていましたよね。いいパンチが当たった場面もあったんですが、それまでの試合では相手を倒せていたようなパンチが当たっても、エルナンデスは簡単に倒れるような感じではなかった。それほど、耐久力がすさまじかったです」
――試合中に、流れを引き戻すのは難しかったでしょうか?
「そうですね。エルナンデスは、耐久力が高くスタミナもあってプレスも強い。フィジカルで上回っていることに加えて、後半に調子が出てくるタイプですから、相当難しいと思います」
――バッティングがあったにしても、あそこまで顔、特に右のまぶたが腫れた中谷選手は見たことがありませんでした。
「あれは偶然のバッティングだったと思います。頭が当たったかな、と思ったあと、急速に腫れだしましたからね。パンチの被弾もありましたし。バッティングで腫れた箇所をパンチでさらに叩かれるというのは、ボクシングではよくあるパターンです。その影響も間違いなくあったでしょう」
(後編:山中慎介は中谷潤人の課題を指摘も......5月予定の井上尚弥戦は「また別の話」と期待>>)
【プロフィール】
■山中慎介(やまなか・しんすけ)
1982年滋賀県生まれ。元WBC世界バンタム級チャンピオンの辰吉丈一郎氏が巻いていたベルトに憧れ、南京都高校(現・京都廣学館高校)でボクシングを始める。専修大学卒業後、2006年プロデビュー。2010年第65代日本バンタム級、2011年第29代WBC世界バンタム級の王座を獲得。「神の左」と称されるフィニッシュブローの左ストレートを武器に、日本歴代2位の12度の防衛を果たし、2018年に引退。現在、ボクシング解説者、アスリートタレントとして各種メディアで活躍。プロ戦績:31戦27勝(19KO)2敗2分。
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