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アイドル時代には届かなかった「センター」の座を掴んだスターダム上谷沙弥 「神様はいるんだね......」 (2ページ目)

  • 大楽聡詞●取材・文 text by Dairaku Satoshi

――それまでプロレスに触れたことはあったんですか?

上谷:プロレスなんて見たこともなかったよ。正直、「痛くて怖い」「ちょっと野蛮」くらいのイメージしか持ってなかった。

――そんな世界に、なぜ飛び込めたんですか?

上谷:最初、運営にプロレスをやるかどうか確認したら、「一切やらない」って言われたから。アイドルになるのが夢だったし、活動のなかで少しは練習もしたけど、それよりも「アイドルになってやる!」って気持ちが上回ってたから迷いはなかったね。

【苦難の練習生時代を経てリングへ】

――しかし2019年には、練習生としてプロレスの世界へ。くじけそうになったことはありましたか?

上谷:あったよ。プロレス界は縦社会で、上下関係がはっきりしてるから、率先して動かなきゃいけなかったり、大きい声をハキハキ出さなきゃいけなかったり、体育会系の部分に慣れるのに時間がかかった。でも一番しんどかったのは、練習を始めて1カ月くらいで、エルボーの練習中に胸骨を骨折した時。息を吸うのもきついし、寝返りも打てない。さすがの私も、あの時は心が折れかけたね。

インタビューに答えた上谷 photo by Tanaka Wataruインタビューに答えた上谷 photo by Tanaka Wataruこの記事に関連する写真を見る

――それはかなり厳しい状況でしたね。

上谷:でも、アイドルとプロレスを両方やってたし、「ここでやめたら、全部が中途半端になる」って思った。どうせやるなら、ちゃんと結果を出したかったから。それに、「プロレスを頑張ったらアイドルとしてもっと輝ける」って、どこかで信じてた。だから逃げずに向き合ったんだ。

――2019年8月、デビュー戦の相手は渡辺桃選手でした。多くのレスラーから、デビュー戦は「緊張で記憶がない」と聞きますが、上谷選手はどうでしたか?

上谷:入場も、リングの上でのこともちゃんと覚えてるよ。得意なダンスを踊りながらリングインしたね。観客席を見渡した時に、「うわ、満員だ」ってはっきり見えた。

 たぶん、アイドル活動やダンスで場数を踏んだのが生きたんだろうね。とはいえ、試合中はとにかく痛かったし、恐怖しかなかった。終わった後も「なんでこんなキツいことをやってるんだろう」って正直思ったよ。

――デビュー後まもなく、キャリア1年未満の選手を対象にした「ルーキー・オブ・スターダム」のトーナメントを優勝。順調なスタートだったのでは?

上谷:ほかに出場していた先輩レスラーたちはプロレス志望で入ってきて、私はアイドル志望からのスタート。アイドル志望の人間が勝ったら、対戦相手もメチャクチャ悔しかっただろうね。でも、アイドルでは生きなかった身長の高さも、運動神経もプロレスでは100%武器になった。そこは、私にしかない強みだったと思ってる。

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