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佐竹雅昭が後世に残してほしい「極真の怪物」との一戦 こだわりのテーマソングは偉大な作曲家から思わぬ提案があった (3ページ目)

【名作曲家が作り直したテーマソング】

"極真の怪物"を突破し、12月13日に東京ドームで行なわれたグランプリ準々決勝で、ピーター・アーツと対戦した。東京ドームでの試合は、1997年のグランプリに続いて2回目だった。

「東京ドームで思い出すのは、リングインするまでの花道ですね。アーツとの試合では、センターのバックスクリーンからリングに向かって花道が用意されたんですが、一歩踏み出して巨大なスタンドを見た瞬間に、『宇宙みたいだ』と感動しました。まさに異空間でしたね」

 佐竹は、試合はもちろん、花道も重要視していたという。

「プロの世界では、『常にお客さんを引きつけないといけない』と思っていました。花道を歩く時も、かなりそれを意識していましたよ」

 最大のこだわりが入場テーマソングだった。映画『ゴジラ』などの映画音楽で知られる作曲家の伊福部昭(いふくべ・あきら)に依頼したのだ。

「僕のテーマソングは『怪獣大戦争マーチ』って言われることが多いんですけど、違うんですよ。僕は伊福部先生のご自宅まで伺って作曲をお願いしたんです。ちょうど文化放送のラジオでレギュラー番組を持っていた時期で、局の方に伊福部先生を紹介いただいて。そうしたら、お孫さんが僕のファンとのことで会うことを快諾いただいたんです」

 佐竹は当初、『怪獣大戦争マーチ』をテーマソングで使うことをお願いするために自宅を訪問したという。しかし伊福部は、「これは入場曲のテンポじゃない。入場曲のテンポで作り直しましょう」と逆に提案した。

「スタジオにオーケストラを用意して、伊福部先生が自ら指揮棒を振った。新たに作り直していただいたんですから、僕のテーマソングは『怪獣大戦争マーチ』ではなくて『闘志天翔~覇王佐竹雅昭のテーマ』なんです。1994年にCDも出てますよ。これは、伊福部ファンのみなさんからしたら、異例の作品だと思います」

 ゴジラを筆頭に、日本の映画史に残る音楽を作り続けた伊福部は、2006年2月8日に91歳で亡くなった。佐竹は偉大な作曲家への敬意を今も忘れておらず、自身のYouTubeチャンネルのテーマソングとしても使用している。

「子どもの頃から『怪獣が好き』と言い続けて、伊福部先生にお会いできて曲も作っていただいた。好きこそものの上手なれ、じゃないですけど、本気で思い続ければ夢は叶うんだなと思いましたよ」

 1998年のK-1グランプリでは、アーツに1ラウンドKOで敗れた。復帰から2年連続で、グランプリは準々決勝で敗退。翌年、佐竹が「またプレッシャーを感じた」と振り返る試合が待っていた。
(つづく)

【プロフィール】

佐竹雅昭(さたけ・まさあき)

1965年8月17日生まれ、大阪府吹田市出身。中学時代に空手家を志し、高校入学と同時に正道会館に入門。大学時代から全日本空手道選手権を通算4度制覇。ヨーロッパ全土、タイ、オーストラリア、アメリカへ武者修行し、そこで世界各国の格闘技、武術を学ぶ。1993年、格闘技イベント「K-1」の旗揚げに関わり、選手としても活躍する傍ら、映画やテレビ・ラジオのバラエティ番組などでも活動。2003年に「総合打撃道」という新武道を掲げ、京都府京都市に佐竹道場を構え総長を務める。2007年、京都の企業・会社・医院など、経営者を対象に「平成武師道」という人間活動学塾を立ち上げ、各地で講演を行なう。

【写真】ケンコバのプロレス連載 試合フォトギャラリー

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