井上尚弥のKOが後半のラウンドに多くなった理由を山中慎介が解説「相手が『いかに倒されないか』を考えている」 (4ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――井上選手の次の相手は、12月にサム・グッドマン選手(IBF&WBO世界1位)が有力視されています。グッドマン選手はここまで19戦全勝(8KO)ですが、どう見ますか?

「う~ん......正直に言うと勝負論はないと思います。ドヘニー戦と同様、尚弥の勝ちは揺るがないでしょう」

――熱い試合になるかどうかは、井上選手とファイトできるかどうかでしょうか?

「そうですね。相手が完全に引いてしまうと、見ごたえのある試合にはなりづらい。今は尚弥を相手に、誰なら盛り上がるのか、楽しませてくれるのかということがテーマになっていると思います。スーパーバンタム級なら、ムラドジャン・アフマダリエフ(元WBA・IBF同級王者)がどこまでやれるのか見てみたいです」

――アフマダリエフ選手は、去年4月にタパレス選手に判定負けを喫して初黒星。2団体王者からも陥落しましたが、スーパーバンタム級のトップランカーであることは間違いない?

「僕は、尚弥がスーパーバンタム級に上げた時、一番見たいカードがアフマダリエフ戦でした。タパレスに敗れましたが、危ないシーンは特に見受けられませんでしたし、オリンピックの銅メダリスト(2016年のリオ五輪)で好戦的な選手です。そのアフマダリエフが尚弥を前にして、下がらずに戦えるのかどうか見たいですね」

――好敵手を見つけるのが難しいほど、井上選手の実力が抜きん出ているのが現状だと。

「尚弥の場合は、あらゆるパンチでKOできますし、仮にアウトボクシングをしてもめちゃくちゃうまいはずです。なんならサウスポーで戦っても勝てるんじゃないか、くらいのレベルだと思います」

――そういえば2017年、WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチのリカルド・ロドリゲス戦でサウスポースタイルを披露したことがありましたね。

「そうでしたね。サウスポーの僕から見ても、あの完成度には驚きました(笑)」

(後編:激闘の「武居由樹vs比嘉大吾」で勝負を分けたポイントをどう見たか 10.13「井上拓真vs堤聖也」も予想した>>)

【プロフィール】
■山中慎介(やまなか・しんすけ)

1982年滋賀県生まれ。元WBC世界バンタム級チャンピオンの辰吉丈一郎氏が巻いていたベルトに憧れ、南京都高校(現・京都廣学館高校)でボクシングを始める。専修大学卒業後、2006年プロデビュー。2010年第65代日本バンタム級、2011年第29代WBC世界バンタム級の王座を獲得。「神の左」と称されるフィニッシュブローの左ストレートを武器に、日本歴代2位の12度の防衛を果たし、2018年に引退。現在、ボクシング解説者、アスリートタレントとして各種メディアで活躍。プロ戦績:31戦27勝(19KO)2敗2分。

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