井上尚弥のKOが後半のラウンドに多くなった理由を山中慎介が解説「相手が『いかに倒されないか』を考えている」 (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――ドヘニー選手は、後ろ重心でディフェンシブな構えでした。

「尚弥を前にすると、結局、ああいう戦い方になるんですよ。試合前は、『俺はイケる』と思ってリングに上がるんでしょうけど、実際は尚弥の圧やパンチの威力を感じて受け身になるんだと思います」

――打ちに行きたくても行けない状況になってしまうということでしょうか。

「ドヘニーの打ち出しに対する尚弥の反応の速さが半端じゃないので、パンチを出す隙がないんですよね。ドヘニーから打つタイミングもないですし、尚弥にカウンターを合わせるタイミングなんて、もっと見当たらなかった。リアクションのよさでドヘニーを完封した感じです」

【相手は"いかに倒されないようにするか"を考えてしまう】

――4ラウンド、ドヘニー選手の左フックが井上選手の顔をかすめましたが、慌てた様子はありませんでした。

「尚弥に危ないシーンはなかったですね。3ラウンドと4ラウンドはジャッジ2人がドヘニーにつけていましたが、なんとかうまくポイントを取ったという感じ。パフォーマンスとしてはあれが限界でしょう。ドヘニーは常に後手だったと思います」

――井上選手がラウンドごとに少しずつギアを上げて、ドヘニー選手はじり貧状態になっていった感じでしょうか?

「そうですね。尚弥はスーパーバンタム級に上げてから、後半のラウンドで勝負を決めることが多くなりました。(スティーブン・フルトン戦:8R TKO、マーロン・タパレス戦:10R KO、ネリ戦:6R TKO、ドヘニー戦:7R TKO)それは、階級の壁というよりも、相手の警戒心が高くなったことが大きいと思います。相手がディフェンシブになったので、倒すのが遅くなるのは当たり前です。ドヘニー戦もあのままいけば、後半のどこかでKOしていたと思いますよ」

――階級が上がれば相手の耐久力も上がるとは思いますが、それよりも相手の戦い方の問題ということですね。

「どんなハードパンチャーでも、ディフェンシブな相手を序盤で倒すのは難しいですから。尚弥を前にすると、相手は"いかに倒されないようにするか"を考えてしまうんでしょう」

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