井上尚弥のKOが後半のラウンドに多くなった理由を山中慎介が解説「相手が『いかに倒されないか』を考えている」 (3ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――山中さんは現役時代、相手が"神の左"を警戒するなかで、どのようにしてこじ開けていったんですか?

「僕は、フィニッシュブローは左ストレートのみですから、当てるまでに時間がかかりました。試合の前半は、左ストレートを当てるタイミングや位置を計っている感じでしたね。世界戦(13勝9KO)で6ラウンド以内にKOしたのは1度だけなんです。1ラウンドで終わった試合(ホセ・ニエベス戦)のみ。前半でKOするというのは、それほど難しいことなんです。それでも尚弥の場合はスーパーバンタム級に上げるまで、前半でガンガン倒していましたけどね(※)」

(※)井上は世界戦23勝(21KO)のうち、前半(6ラウンド以内)でのKOが13回。

――軽量級であの破壊力は、やはり脅威ということですね。

「中・重量級のパウンド・フォー・パウンド(PFP)にランクインしている選手でさえ、前半でのKOを予想されることはなかなかありません。尚弥はそれほど異質ですし、次戦以降の相手もディフェンシブになると思いますよ」

【スーパーバンタム級で対戦が見たい相手は?】

――ドヘニー選手の計量後の大きな増量も話題になりました。スーパーバンタム級のリミット55.3kgから、井上選手は7.4kg増の62.7kg、ドヘニー選手は55.1kgから11kg増の66.1kgで試合に臨みました。

「相手より重ければいいというわけではありません。ベストなパフォーマンスが発揮できるかどうかが重要です。ただ、ドヘニーはいつもそれくらい戻しているので、10キロ程度戻すのがベストってことなんでしょうね」

――ちなみに現役時代、山中さんはどの程度戻していましたか?

「7、8キロくらい減量して、リカバリーで5キロくらい戻してましたね。それでも増やせるようになったほうで、世界チャンピオンになった当初は、3、4キロしか戻せなかったんです。どのくらい戻すかは、減量する期間にもよると思いますけど、僕の場合は時間をかけて徐々に落としていました。いわゆる"水抜き"と言われるような方法で、直前に大きく減量するやり方ではなかったです」

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