ジュリアが語る、Sareeeに抱いた人生初の感情「嫉妬するって、こういうことなんだ」 (4ページ目)

  • 大楽聡詞●取材・文 text by Dairaku Satoshi

――試合後、Sareee選手は「また万全な状態で試合しようよ。今日はありがとう」とジュリア選手にメッセージを送りました。

ジュリア:「ありがとう」なんて聞きたくなかったし、私はマリーゴールドのエースとしてSareeeを止めたかった。誰よりもマリーゴールドが好きだから、それをリング上で証明するために、Sareeeに勝たなければいけなかったのにな......。

――試合後にはSareee選手と抱き合っていました。どういう心境だったのでしょうか?

ジュリア:Sareeeから手を差し出してきたんですよ。そりゃ複雑でしたね。私はSareeeに対してリスペクトの気持ちはあるけど、嫉妬で大っ嫌いになったレスラーでもあるわけで。「この手を握り返してしまったらダメだ」と思ったし、でも、残りの日本にいられる期間を考えたら「区切りをつけるためにも......」と頭をよぎったり、一瞬の間に混乱しました。そうしたらSareeeが私の手をガッて掴んできて、そのまま抱きしめてきた。なんとも言えない感情になりましたね。

――個人的には、手を払いのけて「必ずそのタイトルを奪取するからな!」と言うのを期待していました。

ジュリア:心の中には、ずっとそういう気持ちがありますよ。まあでも、プロレスのリングで真剣にやっていればまた必ず逢えると思いますし。そん時は覚悟しろよと。

 私はこれまでいろんなレスラーと闘って、ビッグマッチも何回も経験して、そこそこの修羅場もくぐってきました。それはSareeeも同じだと思うし、プロレス界で目指しているものも近いと思っています。Sareeeも私のことを「同志だ」と言う。そういうことを言う先輩は珍しいんですよ。これまで闘った先輩は、私のことをコケにしたりバカにしたりしてきて、そういうスタンスでくる奴に対しては容赦せずに闘うことができた。

 でも、Sareeeは私がずっと再戦を望んでいた人だった。Sareeeはキャリア14年で、私は7年。上からガツガツきてもおかしくないのに、彼女はそれをしない。私は、後輩は先輩に対して基本ムカつくのが普通だと思うんですよ。上下関係とか厳しい世界だからなおさらね。「威張りやがって。コイツムカつく」って感情があるからこそ面白い。Sareeeはもちろん先輩だから、ブッ倒さなきゃいけないしムカつくんですけど、決してそれだけじゃない。ひと言では表せないくらい、いろいろな感情がありすぎるんです。

――そんなに複雑な感情を抱いているのですね。

ジュリア:そうですね。私が欠場中にマリーゴールドを盛り上げ、後輩たちに闘いを叩き込んでくれたことへの感謝もある。それは私がやろうとしていたことだ、という悔しさも。どちらの気持ちもあるから、素直になれない部分があるんです。こんなに私の心をかき乱す人は、人生で初めてですよ。

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